食&酒

2026.02.18 14:15

「混ぜる」より「和える」? 食から考える共助のあり方

「三豊食サミット」

「三豊食サミット」

「食」というと、おいしさや健康、最近では持続可能性などが語られることが多い。そんななか、2月上旬に香川県三豊市で行われた食サミットでは、「和」をテーマにさまざまなトークセッションが行われた。

主宰はフランスのニースでレストラン「KEISUKE MATSUSHIMA」を営む松嶋啓介シェフだ。登壇者も、地域プロデューサー、医師、歯科医師、僧侶、経営者など、一見すると「食」とは関係ないように思える顔ぶれである。一体、このサミットでは何が語られたのか。

「和える」が生んだ地域再生

「食の世界は、大きく3つに分けられます。ミシュランの星を追い求めるような『承認欲求の食』、安さや速さを追求する『燃料としての食』、そして人々の健康を保つ『養生としての食』。もちろん昨今は、食の持続可能性などについても広く語られるようになってきています。でも、それらすべてに共通する『和やかな食卓』について語られることは、意外と少ないのではないでしょうか」

そう話す松嶋は、2018年から継続的に「食サミット」を開催してきた。

今回、松嶋が「和」をテーマに掲げた背景には、開催地である三豊市で受けたインスピレーションがある。香川県の最西端に位置し、瀬戸内海を望む三豊市は、江戸末期には塩田で栄えた町だった。しかし近代化の波のなかで、徐々に寂れていった。

そこへ、松嶋の友人でもある地域プロデューサーの古田秘馬を中心に、地元の老舗企業や行政が連携してさまざまなプロジェクトが立ち上がり、ここ数年で大きな変革が起こった。干潮時の鏡のような水面が「日本のウユニ塩湖」と呼ばれ話題となった父母ヶ浜は、2016年には年間5000人ほどしか訪れない浜だったが、わずか5年で約100倍、50万人規模の観光地へと成長した。

同地域では、自助、公助ではなく、「共助」を軸にした取り組みが成長を後押ししてきた。補助金に頼らず、自分たちでファイナンスの仕組みを考え、意欲ある若者にチャンスの場を提供する形で事業を営んでいる。

そのなかで「食」は、重要なコミュニケーションハブとなっている。鮨酒場、焼き鳥屋、クラフトビールの醸造所、スナックなどができ、古びた街並みが新しい商店街へと生まれ変わりつつある。そこでのコミュニケーションを通して、さらなるプロジェクトが生まれているというのだ。肩書きを外し、利害を超えて、同じものを食べ、同じ時間を過ごす。その積み重ねが、人間関係を“混ぜる”のではなく、“和える”関係を育んでいる。

松嶋はこう語る。「『和える』とは、個性を消して一様にすることではありません。それぞれの個性を活かしたまま、互いを引き立て合い、うま味を生み出すこと。うま味の相乗効果こそが、地域の再生、ひいてはこれからの社会に必要な力だと思っています」。

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文=国府田淳

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