年間売上高は465億円を突破、OpenAI「Sora 2」支出額と利用量それぞれが最大の顧客に
サンフランシスコを拠点とするHiggsfieldは、カメラの動きや視覚効果を含む400種類のプリセットをそろえ、テキストによる指示や商品リンク、アップロードした画像をもとに、シネマ風の短編動画を簡単に制作できる仕組みを提供している。同社ウェブアプリは、12種類の最先端AI動画モデルを組み合わせて活用している。利用が急増した結果、Higgsfieldは現在、OpenAIの「Sora 2」モデルの顧客として、支出額と利用量の両方が最大となっている。
有料ユーザーが30万人に到達、年内に1550億円の収益獲得を目指す
その人気は、急激な売上拡大につながった。Higgsfieldは先月、年間売上高ランレート(直近の実績が1年間続くと仮定した場合の年間売上高)が2週間で2倍の2億ドル(約310億円)に達したと発表した。この成長は、主に30万人の有料ユーザーからのサブスクリプション収入に支えられている。また、2月初旬には、年間売上高ランレートが3億ドル(約465億円)を突破した。Higgsfieldのアレックス・マシュラボフCEOは、フォーブスの取材に対し、年内に年間ランレート10億ドル(約1550億円)を目指していると語った。同社は1月中旬、アクセル、GFTベンチャーズ、メンローベンチャーズといった著名ベンチャーキャピタル(VC)から8000万ドル(約124億円)を調達したばかりだが、関係者3人によれば、現在も追加の資金調達に向けた協議を進めているという。
クリエイターに報酬を提示、人種差別動画・わいせつな内容の動画・著名人のフェイク動画を拡散するよう依頼
しかし、関係者9人の証言や、文書・スクリーンショット・SNS投稿の検証によれば、この急成長の背景には、攻撃的で扇情的、誤解を招くようなマーケティング手法があるとみられている。
Higgsfieldは、ストック動画をAI生成と装っていた問題に加え、クリエイターに報酬を提示して、自社のAIツールで制作した不快かつ問題のある動画を拡散するよう求めていた。フォーブスが確認したスクリーンショットや、同社から接触を受けたという3人の証言によれば、複数のクリエイターがHiggsfieldからGoogle Driveのフォルダを受け取っていた。その中には、シュレックやモアナ、ミッキーマウスといった人気子ども向けキャラクターを使った人種差別的なものやわいせつな内容の動画が含まれていたという。シドニー・スウィーニーやゼンデイヤ、トランプ大統領といった著名人を無断で加工したディープフェイク動画もあった。
問題となった動画の1つには、『シュレック』のキャラクターが登場し、ドンキーがシュレックに「長ぐつをはいたネコを食べよう」と持ちかける。それに対し、シュレックが「俺がクソみたいなアジア人に見えるか?」と答えていた。別の動画では、モアナが「私の体は白人のためのもの」と発言していた。3本目は、AIで生成されたシドニー・スウィーニーとゼンデイヤが敵やエイリアンと戦う架空のスパイ映画の予告編だった。Higgsfieldの利用規約では、本人の同意を得ずに容姿を利用することは禁止されている。
社内外で制作された動画の共有や管理体制の不備を認める
Higgsfieldの最高戦略責任者のデ・シルバは、これらの動画が社内のマーケティング担当者と、SNS上の外部の「サードパーティー」クリエイターの双方によって制作されたものであり、数千人のクリエイターに販促素材として共有されたと認めた。「このことは、我々の価値観をまったく反映するものではなく、誤りだった」と彼は述べた。フォーブスがコメントを求めた後、CEOのマシュラボフはクリエイターの懸念に関してXに、「会社の急速な拡大は現実的な課題を伴う。社内プロセスや対外コミュニケーションが、常に我々の中核的な価値観に追いついていたとは言えない。我々は過ちを犯した」と投稿した。
また、Higgsfieldは声明の中で、すべての対外向け資料が自社の価値観に合致しているか確認するため、法務担当者および経営幹部による審査を必須とする新たなプロセスを導入する方針を明らかにした。
「我々は限界に挑んでいることを認める。注目を集めるのはより物議を醸すコンテンツだ」
これらHiggsfieldの動画は確かに一線を越えており、同社がこれまで取ってきたマーケティング手法の延長線上にあるといえる。「我々は限界に挑んでいることを認める。Xのようなプラットフォームで何が機能するかを学んでおり、率直に言って、注目を集めるのはより物議を醸すコンテンツだ」とデ・シルバは語った。
ただしこうした姿勢は、同社が取り込もうとしている一部のクリエイターを遠ざけている。「彼らはマーケティングを手段を選ばないものと捉えていて、目標に到達できるなら何でもありだと考えている」と、Higgsfieldから人種差別的な動画を送られた映画監督のダスティン・ソーントンは述べた。
2月9日には、HiggsfieldのXアカウントが規約違反を理由に停止された。デ・シルバによれば、Xはアカウント停止の理由を「不正なコンテンツ運用」と説明したという。Xはコメント要請に応じていない。本稿掲載時点でも、HiggsfieldのXアカウントは停止されたままだ。


