欧州

2026.02.13 11:30

暴力化するロシアのサイバー犯罪 ウクライナを超えて欧州に飛び火

ウクライナ首都キーウで、送電網の修復作業を行う民間電力会社DTEKの作業員。2026年1月26日撮影(Ukrinform/NurPhoto via Getty Images)

ウクライナ首都キーウで、送電網の修復作業を行う民間電力会社DTEKの作業員。2026年1月26日撮影(Ukrinform/NurPhoto via Getty Images)

ロシア軍のミサイルと無人機(ドローン)がウクライナの発電所や送電線を攻撃する中、ロシアは欧州に対し、電力設備が長らく戦場の一部であり、これはウクライナ国内に限ったことではないことを示している。

ロシアは昨年末、ポーランドで大規模な停電を引き起こしかねないサイバー攻撃を仕掛けたとされている。気温が急激に低下する中、数十のエネルギー施設の制御システムが妨害された。この事件は、ロシアがウクライナ国外の民間施設を狙い始めたことを浮き彫りにした。特に、ウクライナに積極的に協力している政府が標的にされている。

ウクライナやポーランドの状況は、ロシアが電力設備を武器化している実態を如実に示している。まずサイバー侵入によって、そして今や直接的な破壊によって、ロシアは政府に圧力をかけ、市民の回復力を削ごうとしているのだ。

ウクライナは長らく実験場となってきた。ロシアのハッカーは2015年と16年に停電を引き起こす最初のサイバー攻撃を実施し、ウクライナでは数十万人が影響を受けた。これらの作戦は、紛争を想定せず効率性を重視して設計された現代の電力網が主要な標的となる可能性があることを示した。

米グーグルの脅威インテリジェンスグループで主任アナリストを務めるジョン・ハルトクイストは英誌エコノミストに「ロシアのハッカーは実際に妨害する意図を示したことは一度もなかった。ただうそをつき、命令を待っていただけだ」と語った。ポーランドなどでのサイバー攻撃については、12年間の潜伏期間を経て初めて行われた攻撃だと述べた。

同時に、ロシアは物理的な攻撃を強めている。ウクライナはこれを吸収してきたが代償は大きく、電気や暖房のない日々が数日間続くこともある。一方のウクライナ軍も攻勢に転じ、ロシアのエネルギー施設を攻撃している。これはロシアの軍事機構を弱体化させ、財政基盤を損なうことを狙ったものだ。

実際、ウクライナ軍の長距離無人機は、ロシア西部のウクライナとの国境に隣接する地域の石油精製所や燃料貯蔵施設を標的としている。この反撃は広範な戦略的論理を反映している。米シンクタンク大西洋評議会は、ロシアがエネルギー施設を兵器化しているのと同様、ウクライナはロシアのエネルギー資産、特に燃料処理施設への攻撃を、同国の戦争計画を支える物流網を混乱させる手段と見なしていると指摘する。

筆者の取材に応じたウクライナの民間電力最大手DTEKのマクシム・チムチェンコ最高経営責任者(CEO)は、「ミサイルや無人機が今も発電所や変電所、作業員を攻撃している状況で、平和に向けた有意義な進展について語ることは難しい」と指摘。「ロシアの明確な意図は、冬を武器として利用することにある。国際支援がなければ、ウクライナのエネルギー危機は人道危機へと発展する危険性がある」と訴えた。

ロシアがサイバー攻撃への関与について責任を否定することは十分にあり得る。だが、否認はもはや問題ではない。ロシア軍は2022年末以降、ミサイルや無人機を多用し、発電所や変電所、送電線を破壊し続けている。これにより、ウクライナの都市は暗闇と寒さに包まれている。ロシアの目的は、民間人が依存する設備を破壊することで、産業能力を低下させ、人々を疲弊させ、政治的決意を弱体化させることにある。

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翻訳・編集=安藤清香

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