生存者バイアスに注意
もっとも、これらの数字は成功率を過大評価している可能性がある。
なぜなら、そこには生存者バイアスが働いているからである。近年の100年債発行体の中には途中で姿を消した企業もある。JCペニーは1997年に5億ドル(約760億円)の100年債を発行したが、2020年に破産申請を行い、現在は非公開企業として運営されている。当時、債務不履行が発生した際に行われたクレジット・デフォルト・スワップの決済価格オークションでは、一部債務の価値が額面1ドルあたり0.125セント、すなわち、債権者にとっては約99%の損失を示す水準と評価された。他にもアナダルコ・ペトロリアム、ベルサウス、ユニオン・カーバイドなどが買収されており、その多くは業界の変化が規模拡大や適応を迫った結果である。
しかし、たとえ企業が株式市場から退場したとしても、債務が消えるわけではない。企業買収の場合、100年債は存続し、買収した企業の債務となる。破産の場合は法的手続きを通じて回収額が決まる。一方、株式の価値はゼロになる可能性がある。
発行後の株価動向が1つの物語を語るとすれば、発行に至る過程もまた別の物語を語る。
ゲーツマンは、金融市場は群れをなして動くと指摘する。ある発行体が異例の証券を成功裏に市場に持ち込むと、投資家がその構造に慣れ、他社も追随する。このパターンは100年債の歴史に繰り返し見られ、その流れは一定ではなく、波のように発生する。アルファベットの案件はその試金石となる可能性がある。
企業による100年債の発行は依然として珍しいものであり、それが株主に与える影響は明確ではない。繁栄した発行体もあれば、苦戦した発行体もある。アルファベットが発行した債券の総額は同社の設備投資計画と比べれば規模は小さく、超長期資金に対する投資家需要を試す意味合いがあるかもしれない。金融の世界は前例を重んじる。この債券に対する需要が維持されるとすれば、次の100年債は予想より早く登場する可能性がある。


