日本経済の持続的な成長を支える存在として、今中堅・中小企業への期待が高まっている。中堅・中小企業の挑戦に寄り添うみずほ銀行は金融面にとどまらず、未来を見据えて一歩踏み込んだ支援を進める。みずほフィナンシャルグループのキーマン・足立龍生に聞いた。
「私自身の根底には、日本の国力向上に貢献したいという思いが強くあります。国力とは言い換えればGDPであり、これからますます人口が減っていくなか、GDPを増やすには生産性を上げるしか道はないのではないでしょうか」
みずほフィナンシャルグループ(以下、〈みずほ〉)常務執行役員 リテール・事業法人カンパニー共同カンパニー長の足立龍生(以下、足立)はこう切り出した。
「日本の産業は大企業だけでは成り立ちません。例えば自動車産業では完成車メーカーの周囲に何千社ものサプライヤーが存在し、建設業界でも大手ゼネコンを中心に、多くの協力企業がサプライチェーンを構成しています。中堅・中小企業の存在を抜きに完結できる産業は、ほぼないと言っていいでしょう」
だからこそ、中堅・中小企業の競争力をどう高めていくかが問われている。一方で、近年の物価上昇や人手不足、環境コストの増大といった複合的な要因が、企業経営に重くのしかかる。ここにきて局面が変わってきていると、足立は表情を引き締める。
「グローバル環境が急激に変化し、海外拠点をどうするか悩まれている中堅・中小企業が増えています。そこに金利上昇が加わり、投資やチャレンジに対する心理的なハードルが上がっているのです」
こうした環境変化のなかでも、足元の業績が堅調であるがゆえに、将来への備えをつい後回しにしてしまう経営者も少なくないという。足立はあらためて「戦略」という言葉の意味を問い直す。
「特に、長年事業を牽引してきたオーナー企業の経営者のなかには、これまでの成功体験から、今のやり方を大きく変えることに慎重になる方も少なくありません。それ自体はごく自然なことです。ただ、その選択が中長期的にどのような結果をもたらすのかは、一緒に考えていく必要があります。
戦略は『戦いを略す』と書きます。すなわち、“戦わずして勝つ”という意味です。例えばEVの世界でも、プレイヤーの顔ぶれが大きく変わりました。そうした市場の変化を想定し、ハイエンドに特化するのか、あえてローエンドに軸足を置くのか、それともセカンドブランドを立ち上げるのか―。シナリオと打ち手を前もって描いておくことこそが戦略です。あらかじめ準備しておくことが、これからの時代は一層重要になってくるのではないでしょうか」
さらに足立は、モノづくりを取り巻く環境の変化にも目を向ける。
「AIの進化に加え、欧州や中国を中心に、ヒューマノイドの開発が盛んに進められています。こうした技術が普及すれば、モノづくりのあり方は劇的に変わるでしょう。そこから取り残されてしまえば、日本のモノづくり産業はグローバルな競争のなかで厳しい局面に直面しかねません。一方で、日本の製造業には高い現場力や品質へのこだわりといった強みがあります。だからこそ、新たなテクノロジーを自分たちの現場にどう取り込むかを考えることが重要です。さらに、そうした取り組みを調達や生産、物流などサプライチェーン全体に広げていくことができれば、日本企業は十分に勝てるはずです」
日本の製造業が、こうした技術動向を踏まえて自社の強みを磨き続けることは、今後いっそう重要になっていく。ただし、それを一社だけでやりきるのは簡単ではない。
そこでみずほ銀行が力を入れているのが、企業の技術やノウハウを「つなぐ」役割だ。
東北地方6県7社の建設会社が集まり、共同出資による新会社「東北アライアンス建設(TAC)」が2025年6月に設立された。みずほ銀行はその設立と運営を支援している。足立が経緯を振り返る。
「昨今の人手不足で最初に打撃を受けるのは、東北の建設業ではないかという予感が、私にはありました。ちょうど東日本大震災の復興需要が落ち着いていくタイミングで、東北では廃業する企業が増えていました。そこで東北の営業担当役員と、中堅・中小の建設会社を“つなぐ”アライアンスの可能性について議論を重ねました。すると、福島県の隂山建設をはじめ、将来に危機感を抱き、その想いに賛同してくださる企業が、次々と現れたのです」
そこには県を超えてアライアンスを組むことで、人手不足をはじめとする課題に対応できるのではないか、という期待があった。
「これは、県境を越えて工事に必要なリソースを融通し合うためのプラットフォームです。一部の企業では、日雇いの職人さんへの現金支払いや帳簿の手書きなど、従来の商慣行に基づく非効率な業務が多く残っています。こうしたコーポレート部門をひとつのプラットフォームに集約することで効率化を図り、DX化によって生まれたリソースをほかの分野に振り向ける。このような取り組みを通じて業界の生産性向上にもつなげていきます」
これは、〈みずほ〉の「ともに挑む。ともに実る。」というパーパスを体現した取り組みだったと、足立は振り返る。
「みずほ銀行は、47都道府県すべてに支店があります。この全国ネットワークを背景に、地域をまたいだ企業同士のコーディネートができます。加えて、新会社にはみずほ銀行も出資というかたちでコミットしています」
TACへの反響は大きく、多方面から問い合わせが寄せられているという。
「西日本からの問い合わせも多いですし、海外の投資家からも関心を寄せられています。地方創生が叫ばれて久しいですが、地域の活性化には、人を呼び込むための施設や設備の存在が必要です。各県に新幹線の停車駅があり広域的な交通インフラが充実している東北地方は、恵まれています。TACはその地の利を生かし、人を呼び込む施設を建てる受け皿になれると、期待しています」
日本各地の「小さくても強い」企業を世界へ羽ばたかせる
みずほ銀行が“つなぐ”のは、企業同士だけではない。中堅・中小企業のもつ技術やストーリーを社会につなぎ、その価値を広げることにも力を入れている。そうした思いから生まれたのが、中堅・中小企業の強みに光を当て応援する施策「MIZUHO SMALL GIANTS」だ。
「日本には、世界で戦える技術やビジネスモデルをもちながら、まだ脚光を浴びていない企業が数多く存在します。こうした企業に光を当て、国内外に広めるのが狙いです。みずほ銀行はForbes JAPAN主催の『スモール・ジャイアンツ アワード』に協賛していますが、その枠組みも活用し、日ごろから企業をよく知る営業担当のRM(リレーションシップ・マネジャー)から、独自の技術やビジネスモデルが際立つ企業の推薦を募りました。すると想定以上の応募があり、25年のアワードにも多くの企業を推薦できました。
RMがお客さまの技術や強みへの理解を一段と深め、企業の“伸びしろ”の部分を一緒に描くことで、新たなビジネスを提案する動きも広がっています」
地域の実力派企業を巻き込んだ取り組みは、日本の産業競争力の向上に着実につながっていくはずだ。足立が重視するのは、未来を見通しながら、事業や技術、人材や資本、そして伝統とイノベーションなどの組み合わせ方をデザインしていくことだ。
「〈みずほ〉ショートムービーでお伝えしているメッセージ『その先に、こだわれ。』という姿勢を大切にしています。企業の未来を想像し、その方向性に合ったパートナーを紹介したり、違う未来もありうるのではないかと思ったら、別のプランを一緒に考え、機会を生み出すための打ち手をご提案します。お客さまの選択肢を増やしていくことが我々〈みずほ〉の役割だと考えています。
世界が急激に変わるなか、日本のモノづくりをはじめとする各産業は、今が踏ん張り時です。日本企業の競争力を引き上げ、日本の産業を強くしていくためにも、サプライチェーンや技術のコネクティングを加速させていきたいです」



