ここまで見てきた竹島水族館の取り組みは、「奇抜」「ユニーク」「館長のキャラクターが強い」といった言葉で語られることが少なくありません。しかし、浮かび上がるのは、冒頭でも言及した、近年中小企業支援や起業研究の分野で注目されている「エフェクチュエーション理論」です。
エフェクチュエーションの5つの原則に当てはめて、竹島水族館の取り組みを見直してみましょう。
▼手中の鳥の原則
エフェクチュエーションの第一原則は「手中の鳥」です。これは、自分たちがすでに持っているものから始めるという考え方を指します。竹島水族館には、イルカはいません。巨大な水槽もありません。十分な資金もありませんでした。小林館長自身も、「最初から強みが明確だったわけではない」と語っています。むしろ、「できることを一つずつやるしかなかった」という感覚に近かったようです。
その結果として残ったのが、深海魚、距離の近い小さな館内、飼育員の知識とキャラクター、手書きで語ることができる自由度…「今ここにあるものを使うよりなかった」という選択の積み重ねが、後から「竹島水族館らしさ」として立ち上がってきたのです。
強みを定義してから動くのではなく、動いた結果として強みが見えてくる。この点は、エフェクチュエーションが示す「出発点としての手持ち資源」を体現した事例だと言えるでしょう。
▼許容可能な損失の原則
第二の原則は、許容可能な損失です。これは、「どれだけ利益が出るか」ではなく、「最悪どこまでなら耐えられるか」を基準に意思決定を行うという考え方です。竹島水族館の場合、この条件はある意味で極端でした。すでに閉館が議論されるほど追い込まれていたため、「これ以上大きく失う余地がほとんどなかった」状況だったと言えます。だからこそ、大規模な投資は行わない/低コストで試せることしか行わない/うまくいかなければ、すぐに引き返す…といった判断が一貫していました。
飼育員によるファンイベント、夜の交流企画、手書き看板、深海魚展示などは、いずれも「失敗しても致命傷にならう、うまく行けばラッキー」といった取り組みでした。小林館長は、一見すると大胆に見える行動を取っていますが、実際にはお金を過k図に小さく始める、ということを徹底していたのでした。


