経営・戦略

2026.03.04 15:15

「ちっさいボロい、イルカいない」けど面白い。竹島水族館の超・低コスト赤字逆転劇

愛知県蒲郡市 竹島水族館にて、筆者撮影

また、説明看板のあり方も一般的な水族館とは大きく異なっています。図鑑のような堅い解説ではなく、飼育員が手書きでユーモアを交えたポップを掲示しています。

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「キモチ悪い」を売りにする深海生物を活かした展示

竹島水族館は現在、常時100種以上、多い時には140種もの深海生物を展示していることで知られています。これは国内でもトップクラスの規模であり、「全国で最も多くの種類の深海生物を観察できる水族館」と評されることもあります。

「イルカやラッコがいない代わりに、何を見せるのか」。この問いに対して、小林館長たちがたどり着いた答えが「地域で獲れる魚」でした。三河湾は深海魚漁が盛んな地域であり、地元漁師の協力を得ることで、珍しい魚を安く、安定的に入手できる環境があったのです。その結果、「見たことがなく、少しキモチ悪い深海魚」を前面に出した展示が実現し、来館者の好奇心や怖いもの見たさを刺激する構成となりました。

さらに、土管の中からウツボが何匹も顔を出すような展示演出など、同じ魚でも見せ方を工夫することで、来館者の視線を引きつける仕掛けが随所に施されています。

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「飼育員も展示の一部になる」という発想

竹島水族館の特徴は、生き物の展示だけにとどまりません。飼育員自身も「体験型コンテンツ」の一部として位置付けられています。館内では、来館者と積極的に会話を交わす飼育員の姿が日常的に見られ、名前を覚え合うほど親密な関係が生まれることもあるそうです。

竹島水族館 公式インスタグラムより(@takeshimaaquarium)

また、飼育員自身が深海魚を実際に食べ、その感想をYouTubeや手書きレポートで発信する取り組みも行われています。こうした体験を前提とした発信は、エンターテインメントとして来館者を惹きつけています。

これらの取り組みの結果、来館者数は着実に回復していきました。コロナ禍前の2018年には約47万人と過去最高水準に達し、2025年には約48万人を超えたという報道もあります。これは、約4倍に増加、小規模水族館の象徴的な復活事例として、多くのメディアでも注目されています。

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文=秋元祥治 編集=石井節子

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