起業家

2026.02.18 18:00

ロシア国営企業が絡むインド製油所に投資、富豪になった起業家が動かす新投資会社の行方

起業家のフィリッポ・ギレッリ(写真左)Photo by Andreas Rentz/Getty Images for amfAR

起業家のフィリッポ・ギレッリ(写真左)Photo by Andreas Rentz/Getty Images for amfAR

イタリア人の起業家、フィリッポ・ギレッリ(45)は母国で財を築いた後、インド最大級の製油所の1つに大きな賭けを行った。その取引を成功させた彼はビリオネアとなり、欧州のプライベートジェット専用空港から宇宙空間のデータセンターまでを含む、新たなビジネス帝国の構築に乗り出している。

インドの「ナヤラ・エナジー」製油所への投資で資産約2295億円を構築

2025年春のよく晴れた日の午後、モナコのオフィスからオンライン取材に応じたフィリッポ・ギレッリは、ノートパソコンの画面に、地中海の景色を映してみせた。「ここにはもう5年以上住んでいる。とても便利な拠点だ」と彼は明るい声で語り、ロンドン、ニューヨーク、ドバイなどの都市を仕事で頻繁に訪れていると述べた。

その3カ月後、ギレッリはロンドンからフォーブスの取材に応じた。「ローマの大学を卒業後、私はアフリカに渡った」と彼は振り返った。ギニアやマリなど、インフラ関連のエンジニアリング事業に携わり始めた国々の名も挙げた。

ギレッリは、各地を転々とするキャリアを歩んできた。20代後半から30代前半にかけて、イタリアと北アフリカで不動産事業により一定の資産を築いたが、アラブの春の混乱の中のエジプトでその大半を失いかけた。その後イタリアに戻り、大企業のエネルギーコストを削減する企業を創業して再出発した。

だが、推定15億ドル(約2295億円。1ドル=153円換算)にのぼる彼の資産の大部分は、インドにおける事業から生まれている。2023年1月、ギレッリは、同国で生涯最大の取引を成立させた。彼は、自身のエネルギー効率化企業の一部売却と不動産投資で得た資金を元手に、インド西海岸にある同国第2位の規模を持つ「ナヤラ・エナジー」製油所の25%の持ち分を、シンガポール拠点の石油取引大手トラフィギュラから取得した。

トラフィギュラ・ロスネフチ・UCPが巨額で買収した製油所の持ち分を、大幅な割引価格で取得

トラフィギュラは2017年、ロシアの国営石油会社ロスネフチ、モスクワ拠点の投資会社UCPとともにこの製油所を負債を含めて129億ドル(約2兆円)で買収した。トラフィギュラは取得分の85%を銀行融資で賄い、残りを現金で支払った。

ギレッリがトラフィギュラの持ち分取得に初めて関心を示したのは2020年だった。この取引そのものは、2021年に成立したが、インドの独占禁止当局による承認は、ロシアによるウクライナ侵攻から11カ月後の2023年にずれ込んだ(トラフィギュラは、2022年時点でロシア国営企業との長期契約から撤退すると発表していた)。ギレッリは、侵攻が価格や自身の投資判断に影響を与えることはなかったと述べている。

持ち分取得時の金額は約259億円、現在の持ち分価値は少なくとも約1686億円と推定

トラフィギュラの公開資料によれば、彼は同社の持ち分を1億6900万ドル(約258億円)で取得した。これは2017年に同社が支払った金額より42%低い水準だった。現在、その持ち分の価値は負債を差し引いたベースで少なくとも11億ドル(約1686億円)に上るとフォーブスは推計している。

その製油所を運営するナヤラ・エナジーは、製油所のほかにも、インド最大の民間系ガソリンスタンド網と深水港を保有している。急成長する経済と人口を背景にインドが割安なロシア産原油の輸入を拡大するなか、ナヤラは大きな利益を上げてきたとみられる。2025年3月期の同社の売上高は176億ドル(約259億円)、純利益は7億6000万ドル(約1163億円)を計上した。2022年以降、売上高は25%、純利益は500%、それぞれ増加した。

「事業価値は飛躍的に高まった。会社は生産性を大幅に向上させ、利益率も大きく改善した。何より幸運に恵まれた金融投資だった」とギレッリは語る。

ナヤラは、インドで最も魅力的な資産の1つといえる存在だ。エネルギー調査会社リスタッド・エナジーでコモディティ市場担当シニアバイスプレジデントを務めるパンカジ・スリバスタバは、「ナヤラは極めて重要な役割を担っている。インドは成長途上の国であり、燃料需要は継続的に増加している。同社は国内燃料需要の相当部分を供給している。立地も戦略的だ」と指摘する。

次ページ > 欧州連合によるロシア国営石油会社ロスネフチへの制裁で、決済や輸出が一時停止

翻訳=上田裕資

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事