起業家

2026.02.18 18:00

ロシア国営企業が絡むインド製油所に投資、富豪になった起業家が動かす新投資会社の行方

起業家のフィリッポ・ギレッリ(写真左)Photo by Andreas Rentz/Getty Images for amfAR

欧州連合によるロシア国営石油会社ロスネフチへの制裁で、決済や輸出が一時停止

インドのメディアThe Morning Contextが3月に報じたところによると、サウジアラビア国営の石油大手アラムコと、インドのビリオネアであるムケシュ・アンバニ率いるリライアンス・グループが、いずれもナヤラの買収を試みていたという。大手紙タイムズ・オブ・インディアは6月、別のインド紙の報道として、ナヤラの主要株主であるロスネフチが最大200億ドル(約3.1兆円)を求めていると報じた。だが7月、欧州連合(EU)がロスネフチの関与を理由にナヤラに制裁を科したことで、売却交渉は停滞したと報じられている。

advertisement

この制裁により、一部の銀行はナヤラ向け決済を停止し、マイクロソフトはクラウドサービスの提供を打ち切った。加えて、制裁前にナヤラの原油輸入の37%を占めていたイラクとサウジアラビアも輸出を停止した。なお、残りの輸入分はロシア産だった(データ分析会社クプラーの統計)。ロスネフチおよびUCPの広報担当者はコメント要請に応じなかった。サウジアラムコの広報担当者はコメントを控え、リライアンス・インダストリーズの広報はフォーブスに対し、「ナヤラの買収交渉は行っていない」と述べた。

燃料の約88%をインド国内で販売、ブラジル・スーダン・トルコなど新たな輸出先も開拓

ナヤラの事業は急激に回復を遂げており、現在は燃料の約88%をインド国内で販売している。この割合は、2025年10月時点の約3分の2から大きく上昇した。ブラジル・スーダン・トルコなど新たな輸出先も開拓し、決済の円滑化に向けて現地の銀行との連携も強化した。データ分析会社クプラーによれば、12月時点でナヤラの原油調達はほぼすべてロシア産となり、製油所の稼働率もフル操業に近い水準に戻っている。

「ナヤラは、複数の方面から圧力を受けながらも事業規模を拡大した。割安なロシア産原油への安定的なアクセス、新たな物流ルートの確立、新興輸出市場の開拓、そして制裁下でも取引に応じる買い手の拡大が相まって、製油所は経済的に最適に近い稼働水準を維持できている」と、クプラーのアナリスト、スミット・リトリアは指摘する。

advertisement

ギレッリは受動的な立場にすぎないことを強調、持ち分売却の可能性も

一方、ギレッリは、少数株主である自身が受動的な立場にすぎないことを強調する。また、ロシアへの制裁が投資の価値を損なったとは考えていないと述べている。

「ナヤラは実質的にインド市場で成り立っている。主な販売先が欧州であれば問題になっていただろうが、実際には国内市場中心のため、業績への影響はなかった」と述べ、こう続けた。「制裁が売却を早める要因になる可能性はあるが、その先行きは今後を見守るしかない」。

2024年に新たな投資会社Infracorpを立ち上げ、多様なインフラ整備を手がける方針を掲げる

仮にナヤラが報道で取り沙汰されている水準、あるいはフォーブスがより保守的に見積もる価格で売却されれば、ギレッリは500%を超えるリターンを手にすることになる。一方ナヤラの先行きにかかわらず、ギレッリは次の展開を見据えている。彼は2024年に「Infracorp(インフラコープ)」と名付けた新たな投資会社を立ち上げ、宇宙港やプライベート空港、軌道上のデータセンター、洋上の原子炉に至るまで、多様なインフラ整備を手がける方針を掲げている。

「我々の目的は、社会全体を支える基幹インフラに投資することだ」とギレッリは語る。現在進行中および将来構想の投資案件について、彼は次々と壮大な計画を挙げている。「送電網向けのエネルギーを生み出したい。分散型AIにも力を入れている。最初の空港も取得した。そこは将来的に欧州で最も重要なプライベートジェット専用ターミナルになるだろう。宇宙モジュールや将来の宇宙ステーション、軌道上データセンターの開発にも取り組んでいる。今後6カ月から1年以内に、非常に興味深いプロジェクトをいくつか発表する予定だ」。

これは、壮大な夢物語にすぎないようにも聞こえる。しかしギレッリは、それぞれの分野で業界の専門家を周囲に集め、構想を現実に落とし込むための助言を仰いでいる。実際、彼はモナコ近郊のプライベート空港や、イタリア南部の廃棄物発電プラントといった案件にすでに着手している。

イスラエルの宇宙コンピューティング企業ラモン・スペースで最高商務責任者(CCO)を務め、ギレッリの宇宙関連投資のアドバイザーでもあるステファノ・ポリは、「彼は大局を見通し、それに向かって突き進む人物だ。複数の盤面で同時にチェスを指せる人間だ」と評価する。

また、クルーズおよび旅行業界で財を築いたモナコ在住のビリオネア、マンフレディ・レフェーブル・ドヴィディオは、「彼は非常に起業家精神が旺盛だ。口にしたことを実際にやり遂げる傾向がある」と述べている。

次ページ > 建設業と不動産投資での成功、エジプトでの挫折──エネルギー効率化事業で再起

翻訳=上田裕資

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事