VC

2026.02.15 17:00

スティーブ・ジョブズの息子が率いる「がん治療支援VC」、2号ファンドで536億円調達へ

ベンチャーキャピタル「Yosemite」を率いるリード・ジョブズ(Photo by Kimberly White/Getty Images for TechCrunch)

母創設の慈善団体エマーソン・コレクティブに参加、研究から実用化までの「死の谷」に対処

リードは、父ががんと診断された後、多くの人がそうであるように、この病気のことが頭から離れなくなった。10代の頃にはスタンフォード大学のがん研究室で夏季インターンを経験し、同大学に進学して医学部進学課程の学生として学び始めた。しかし、一時はそこから距離を置こうと考えて、専攻を歴史学に変更した。その後、核兵器戦略をテーマに修士号を取得した。

advertisement

やがて、がん研究や治療の分野で変化を起こせる可能性が、彼を再び医療の世界へと引き戻した。リードは24歳でエマーソン・コレクティブに加わり、投資と慈善活動の両面にまたがる、がん分野を中心とした新たなヘルスケア戦略を任された。彼の目標は、科学者が発見を成し遂げてから、臨床データが十分に蓄積され投資家が資金を投じる段階に至るまでの空白期間、いわゆる「死の谷」に対処することだった。

助成金と投資を組み合わせるモデルで、政府支援が減る科学研究を支援

ヨセミテは、他の一般的なVCとは異なり、研究者に対して条件を付けない助成金も提供している。そのため、研究者が画期的な成果を事業化しようとして資金調達に動く段階になると、ヨセミテは有利な立場に立てる。リードは、連邦政府が科学研究への支援を削減する現在、助成金と投資を組み合わせるモデルがとりわけ重要だとも考えている。

米国の科学に対する危機感から、研究者のために行動

「現在の米国の科学は不安定な状況にある。だからこそ、我々は研究者のためにも立ち上がらなければならないし、これまで以上に行動する責任がある。我々は強い危機感を持っている」とリードは語る。

advertisement

カリフォルニア大学バークレー校のノーベル賞受賞者ジェニファー・ダウドナの研究室からスピンアウトしたアゼリア・セラピューティクスも、そうした初期段階の助成金を受けた企業の1つだ。同社は、患者の細胞を体外に取り出して改変する必要がない遺伝子治療の開発に取り組んでいる。これは、体内で直接遺伝子を書き換える「インビボ」型と呼ばれる治療法だ。

「ヨセミテの本当にユニークな点は、大学の研究室との強い結びつきにある。彼らはごく早い段階で、このハイリスクな研究が成功すれば、革新的な成果につながると見抜いていた」と、アゼリアの共同創業者兼CEOのジェニー・ハミルトンは語る。ヨセミテは、2025年11月に総額8200万ドル(約125億円)を調達してステルス状態を脱出したアゼリアの主要投資家の1つで、リードは現在、同社の取締役会オブザーバーを務めている。

リードの投資姿勢を象徴するもう1社が、AIを活用し、新薬創出につながるタンパク質を設計する2024年創業のチャイ・ディスカバリーだ。同社モデルは、これまで治療が難しい、あるいは「創薬が不可能」と考えられてきた特定のがん疾患の克服に挑んでいる。2025年12月、同社はゼネラル・カタリスト主導で1億3000万ドル(約199億円)を調達し、評価額は13億ドル(約1989億円)に達した。2026年1月には、イーライリリーと新薬開発で提携したと発表した。「チャイ・ディスカバリーは、この10年で最も重要な企業の1つになる可能性がある」とリードは語る。

次ページ > 放射性医薬品やがんワクチンなど、新たな治療法の可能性に注目

翻訳=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事