北米

2026.02.16 15:00

20代前半で数億円調達──米VCは経験よりも「チャンス」を優先、予測市場新興への資金攻勢

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Pluto、AI計算のGPU利用コスト上昇を補填する“保険”の一種と主張

Plutoは、ニューヨークを拠点とする創業1年のスタートアップだ。創業者のロンイト・ジェイン(22)は、かつてカリフォルニア大学バークレー校で工学を学ぶ学生として、ロボアドバイザー企業のQuantbaseでインターンを務めたという。また初期のKalshiが手がけていた天候関連市場向けにアルゴリズムの学習戦略の開発を支援した。18歳当時のこの経験と、大学で取り組んでいたAIの課外研究を通じて彼は、新たな予測市場の構想を思いつき、AI計算に関連するGPUコストで賭博が可能な市場のPlutoを立ち上げた。

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ジェインは将来的に、トレーダーやAI企業が、エネルギー市場の参加者が原油価格をヘッジや投機の対象とするのと同じように、自身のプラットフォームを使ってAI関連コストをヘッジするようになると見込んでいる。

彼は、自身のプラットフォームがAI企業だけでなく、データセンター建設向けに数十億ドル(数千億円)規模の融資を行ってきた銀行やその他の債権者にとっても、一種の保険の役割を果たすようになると考えている。「今後10年で最も重要なコモディティの1つになるかもしれない資産について、人々がヘッジや賭博取引、投機を行える金融レイヤーになりたい」とジェインは語る。

彼によれば、Plutoは2025年8月、Polymarketの初期投資家の一部やYコンビネータを含む投資家から300万ドル(約4億6000万円)のシード資金を調達した。Plutoに近い関係者によると、同社は現在、約6000万ドル(約91億円)の評価額で700万ドル(約10億6000万円)を調達するラウンドを進めており、規制当局の承認を受けた上で正式ローンチを目指している。

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賭博を提供する予測市場がある種の保険として機能し得るという考えは、以前からビリオネアのジェフ・ヤスといった支持者の間で唱えられてきた。ヤスは、Kalshiでマーケットメイクを担う、投資会社サスケハナ・インターナショナルの創業者だ。ハリケーン多発地域の住宅所有者が従来の住宅保険に加入する代わりに、予測市場でハリケーンの発生確率で賭博を行うことで、事実上、物件の損害リスクをヘッジできる可能性があると指摘している。

本稿冒頭でも登場したVCのゴールドバーグは、スポーツ賭博やトランプ大統領の投稿、テイラー・スウィフトの結婚を巡る投機を単なるギャンブルと捉えるのであれば、予測市場の本質的な成長余地は、「代替的な保険商品としての用途にこそある」と述べている。「私の考えでは、ギャンブルとゲーム化、そして消費者金融の境界線は、かつてないほど曖昧になっている」と彼は語る。

AIモデルの挙動を把握する検証ツールとして、予測市場における賭博行為を活用

一部スタートアップは、予測市場における賭博行為を「AIの検証ツール」として活用している。サンフランシスコ拠点のArcada Labs創業者、グレース・リーは、「AIモデルの常識や直感といった人間的な特性をどのように測定するかという課題に取り組む中で、自然と予測市場に行き着いた」と語る。リーは、Grok、Claude、Gemini、ChatGPTといった複数のAIモデルをKalshiにデプロイし、人間の監督なしで賭博を行わせることで、それぞれのモデルの挙動をより明確に把握できるようになったと述べている。

Kalshiの賭博でプラスの収益を上げた唯一のモデルは、Grokの「4.20」モデルだったという。このモデルは、日々の天候や失業率などのテーマに関する賭博で、現時点で約400ドル(約6万円)を得ており、賭け金に対して約4%のリターンとなっている。リーは、この結果がGrokの「比較的保守的な性格」に起因するものとみている。他のモデルが時間の経過とともに、より多く、あるいはよりリスクの高い賭博をする傾向があったのに対し、Grokは高い確信度を持つ少数の賭博に絞って大きな利益を狙う戦略を取ったという。

リーによれば、Arcadaは現在、AI開発を急ぐ企業と協議を進めており、予測市場でのパフォーマンスを活用することで、開発者がこれらモデルの性能を検証し、改善できる可能性があるという。事情に詳しい関係者によると、Arcadaは最近、Yコンビネータやコンビクションなどから790万ドル(約12億円)のシード資金を調達した。

他のスタートアップは、KalshiやPolymarketなど既存市場の上に機能を重ねる形で、賭博支援や分析サービスを提供している。実際、2025年後半にはKalshiとPolymarketの両社がビルダープログラムを立ち上げ、それぞれ200万ドル(約3億円)と250万ドル(約3億8000万円)の支援金を確保し、自社市場上でサービスを開発する創業者に提供している。

その支援金の受給企業の1つであるPolyfundは、予測市場を利用する賭け主向けにファンド運用と分析サービスを提供している。また、数千の市場データを網羅的に分析するAI駆動型プラットフォームのPolysightsは、1月にPolymarketから2万5000ドル(約380万円)の支援金を獲得した。サンフランシスコ拠点のValenceは、KalshiとPolymarketの市場を横断的に集約する賭博のためのプラットフォームを提供している。同社は、Yコンビネータの支援を受け、Kalshiのビルダープログラムにも参加している。

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翻訳=上田裕資

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