従来の“丁半博打”形式を超えるべく、新手のオンライン賭博が可能な予測市場を開拓するスタートアップ
前述のトランプ政権による後押し、交渉や裁判を通じた米商品先物取引委員会(CFTC)の姿勢の変化など、規制面での追い風と投資家の高い関心を背景に、予測市場のスタートアップは次々と生まれている。ただし、新たに登場している企業は、PolymarketやKalshiの単なるコピーではない。ロングやショートのポジションのような体裁で賭博を行える新たなデリバティブ商品を導入するプラットフォームもあれば、複数の市場を横断的に扱うアグリゲーターや分析企業、特定分野に特化し賭博を提供するプレイヤーも存在する。
スポーツ賭博のNovig、実際に現金を賭けられるようCFTCに承認を申請
ニューヨーク拠点のNovigは、2024年1月に当初はゲームとしてスポーツ予測市場を立ち上げたが、同年夏に、手数料無料のスポーツ賭博取引所として実際に現金を賭けられるよう、米商品先物取引委員会(CFTC)に承認を申請した。2021年、創業者2人がハーバード大学に在学中だった時期に設立された同社は、これまでにForerunner Venturesや、NFLの名クォーターバックであるジョー・モンタナから計3300万ドル(約50億円)の資金を調達している。創業者のジェイコブ・フォーティンスキーは、「現政権によって状況は変わった。我々は、この好機を逃したくない」と語る。
Noise、ネット上のトレンドに対してポジションを取る「アテンション市場」モデルを採用
前述のパラダイムは2025年1月、ニューヨークを拠点とする11人規模のスタートアップ、Noiseの評価額を3500万ドル(約53億円)として710万ドル(約10億8000万円)のシードラウンドを主導した。パラダイムは、2024年12月にKalshiの10億ドル(約1520億円)規模の資金調達ラウンドも主導している。KalshiやPolymarketは、特定の日付に「はい」か「いいえ」で決着する二者択一型(バイナリー)の契約という、“丁半博打”形式の賭博を設定する仕組みをとっている。一方、Noiseは「アテンション市場」と呼ばれるモデルを採用しており、ユーザーはインターネット上のトレンドやアイデア、ブランドに対してロングまたはショートのポジションを取る体裁で賭博を行う。
例えば、Noiseで賭博対象となっているトレンドの1つに、ミームコインが挙げられる。同社のウェブサイトでは、ミームコインの「マインドシェア(関心度)」は100点満点中2.87と表示されている。この数値は、XやRedditなどのソーシャルメディアから収集したデータに基づき、ミームコインのブームがすでに下火になっていることを示している。ただし、あるトレーダーがミームコインの再浮上を信じるなら、Noiseで1000ドル(約15万円)分のロングポジションを取る体裁で賭博が可能だ。仮にミームコインの人気が回復し、その数値が30まで上昇すれば、1000ドル(約15万円)の賭け金は約1万ドル(約152万円)の価値になる。
Noise創業者、南カリフォルニア大学を最近卒業したガブリエル・ペレス・カラファ(24)は、こう語る。「KalshiやPolymarketがやってきたことは、とりわけ規制面を考えると、相当な覚悟が必要だった。ただ、二者択一のオプションという“丁半博打”形式は、ある意味でもう出尽くしたとも感じていた」。
Polymarketもアテンション市場に注目、Kaito AIと提携を発表
アテンション市場モデルという賭博の可能性は、Polymarketも見逃していない。同社は2月10日、暗号資産の調査・データアグリゲーターで、Noiseとも提携しているKaito AIとの提携を発表した。Polymarketのアテンション市場は、Noiseのようにロングやショートのポジションを常時取る賭博を行える「パーペチュアル市場」ではないものの、「アンソロピックの関心度は今後の1カ月で、OpenAIを上回るか」といった問いでギャンブルができるようになる。
Polymarketの暗号資産部門責任者は、年内に数百のアテンション市場が立ち上がり、「あらゆるものに市場をつくる」という自社ビジョンを後押しすることになると見込んでいる。
「この1年で、予測市場で働きたいと考える優秀な人材が一気に流れ込んできた。それは創業者として本当にありがたいことだ。企業にとって最も望ましいのは、優れた人々が『ここで働きたい』と思ってくれることだ」とNoiseの創業者のカラファは話す。


