カルチャー

2026.02.19 15:15

「カルチャープレナーの聖地」とは何か 京都で交わされた、文化起業の次のかたち

「カルチャープレナーのこれから」をテーマに、率直な意見や視点が交わされた

意見交換会:「カルチャープレナーの“聖地”」をどう考えるか

後半は3階フロアへ移動し、参加者同士による意見交換会が行われた。テーマとして掲げられたのは、「京都市をカルチャープレナーの聖地にするにはどうすればいいのか」。カルチャープレナー当事者と行政とがそれぞれの立場から考えや視点を持ち寄り、2つのテーブルに分かれて、率直な意見が交わされた。

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一般向けのワークショップ開催時にも利用されている同フロアは、全体に拭き漆が施された美しい床材や、ガラス越しに漆職人の作業の様子を垣間見ることができる隣接工房など、漆を身近に感じられる仕掛けが充実
一般向けのワークショップ開催時にも利用されている同フロアは、全体に拭き漆が施された美しい床材や、ガラス越しに漆職人の作業の様子を垣間見ることができる隣接工房など、漆を身近に感じられる仕掛けが充実

京都市がこのテーマを掲げた背景には、2022年以降、カルチャープレナーという言葉や概念の浸透を図りながら、市内の担い手と投資家をつなぐ場づくりなどを重ねてきた経緯がある。

Relier81 founderの田尻大智(23年受賞者)は、「上場や大型M&Aといった分かりやすい成功モデルではない、アイデアベースの起業に光を当ててもらったのは、『カルチャープレナー』という新しい枠組みがあったからだと思う。こうしたジャンルがあるからこそ、輝ける経営者もいる」と振り返る。

水玄京代表の角居元成(中央)
水玄京代表の角居元成(中央)

また、「行政に期待する支援はあるか」という京都市側からの問いかけに対し、水玄京代表の角居元成(2024年受賞者)は、国際都市としての京都市が持つネットワークに言及。10ある姉妹都市との関係性を、カルチャープレナーの海外展開につなげられないかと提案した。フランスでは、行政がシャネルやバカラといったラグジュアリーブランドを外交の場に招くことで、文化と経済を結びつけてきた例があるという。「京都市の外交の場でも、日本文化を紹介する機会を増やしてもらえたら」と語り、京都の知名度を生かした接点づくりへの期待を示した。

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一方、もうひとつのテーブルでは、「そもそも『聖地』とは何を意味するのか」という点が話題に。京都市の担当者は、「聖地化は目的ではなく、あくまで分かりやすいスローガンにすぎない」と前置きしたうえで、「カルチャープレナーが持続的に商いを続けられる環境をどう整えるかが本質ではないか」と問題提起した。

これを受けて、扇沢友樹(めい代表取締役/23年京都市特別賞)からは、「本当に『聖地』である必要があるのか」という問いかけも。カルチャープレナーの多くは、その土地の文化や自然に根差した活動を行っており、人材が流動的に移動するシリコンバレー型のモデルとは前提が異なる。単に事業者を集める場ではなく、「育成や学びの拠点としての役割を担うことも考えられるのではないか」と投げかけた。

めい代表取締役 扇沢友樹
めい代表取締役 扇沢友樹

さらに、堤氏は「カルチャープレナーの聖地化とは、京都の在り方そのものを再定義することにつながると思う」と指摘。文化の街として知られる京都だが、その文化は土地と結びついた自然や暮らしの延長線上にある。そうした関係性を可視化できる都市であることこそが、文化を次の世代へつなぐ一つのかたちではないか──そんな視点が共有された。

時間いっぱいまで続いた議論は、「聖地」という言葉を起点に、カルチャープレナーを取り巻く環境や支援のあり方について、多様な視点が引き出された点が印象的だった。受賞者同士で活動状況を共有し、今後のビジネスのヒントとなるアイディアを得る場面も見受けられ、カルチャープレナーの存在感の強まりと、新展開への期待を感じるひとときだった。文化を軸にした起業が点ではなく線となり、ゆるやかに結びつき始めていることを示す場となった。

文=眞板響子

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