暗号資産

2026.02.15 09:00

「最悪の逆張り」が約3.1兆円のAIインフラに、暗号資産の富豪ノボグラッツ

マイケル・ノボグラッツ(Photo by Marco Bello/Getty Images)

買収した施設の価値が急騰するものの、複雑な経営判断を迫られる

ノボグラッツはこれまで数々の方向転換や賭けを重ねてきたが、最も大きな意味を持つ決断は、ヘッジとして購入したテキサスの広大な草原地帯の施設だったのかもしれない。ヘリオスは規模だけでなく、その立地自体にも大きな価値があった。同施設は、トランプ大統領が2017年に実施した減税策で創設された「クオリファイド・オポチュニティ・ゾーン(適格機会特区)」内に位置しており、ギャラクシーはキャピタルゲイン課税の繰り延べという恩恵を受けている。

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税制優遇とAI需要で資産価値は約3.1兆円を超え、企業価値を凌駕

「我々がヘリオスに与えている評価額は、現時点ですでに同社の暗号資産プラットフォーム全体の価値を上回っている」と、ベンチマークのアナリスト、マーク・パーマーは述べている。だが、それでも控えめな見方かもしれない。H.C.ウェインライトのアナリスト、マイク・コロネーゼは、ヘリオス単体の価値がギャラクシーの現在の時価総額の2倍、すなわち200億ドル(約3.1兆円)超に達する可能性があると指摘する。パーマーは、「ヘリオスは、企業財務の歴史においても屈指の買収案件の1つだ」と述べている。

しかし、急速に進化する2つの成長分野の最前線に立つことは、独特の難しさを伴う。ノボグラッツはこう語る。「我々は現在、複雑な局面にいる。いずれ本格的な決断を下す時が来るだろう。持ち株会社になる可能性もあるし、2つの会社に分割するかもしれない。ただし、暗号資産事業は規模を拡大しなければならない」。

異なる事業特性を持つ部門の分離や、大手企業への売却を視野に入れる

ギャラクシーの最高投資責任者(CIO)のフェラーロは、より率直に「公開市場は単純なストーリーを好む」と語る。デジタル資産とデータセンターの両方を理解してもらうのは容易ではなく、資本市場はいずれ明確な構造を求めるようになるという。「データセンター事業は、20年償還の銀行借入で数十億ドル(数千億円)規模の資金調達を行うことになる」とフェラーロは言う。「それは変動の激しい暗号資産とはまったく異なる性質だ。もし両事業を一体で抱えることで適正な評価が得られない局面に至れば、分離を検討しないわけにはいかない」。

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フェラーロは、将来の展開について、「現在はギャラクシーのような企業がデータセンター建設に資金を投じているが、やがて主要顧客がインフラは自社で保有したいと考えるかもしれない」と述べている。その場合、ノボグラッツのデータセンター事業は、グーグルやマイクロソフトにとって分社化や買収の有力な対象になるかもしれない。

ビットコインとギャンブルだけに終わるなら、大金を稼げたとしても業界としては失敗

ノボグラッツがより深く関与している暗号資産部門は、議会で審議中の市場構造法案の成立を待ち望んでいる。この法案が成立すれば、規制の不確実性を恐れずに機関投資家が暗号資産市場に参入できるようになるからだ。もっとも、競争はすでに始まっている。ビットコインに長年懐疑的だったJPモルガンのCEOジェイミー・ダイモン率いるJPモルガンでさえ、機関投資家向けの暗号資産取引の提供を検討していると報じられている。

ノボグラッツの見立てでは、暗号資産は今、重要な転換期にある。理想主義やレバレッジ、投機に支えられた理念先行の市場から、金融市場の基盤を支える実用的なインフラへと変わりつつあるのだ。

「3年後、テイラー・スウィフトのコンサートチケットを暗号資産で、しかも分散型取引所を通じてプログラム可能な形で買えないようなら、業界として失敗だ」とノボグラッツは語る。「もしビットコインとギャンブルだけに終わるなら、たとえ大金を稼げたとしても、この10年は無駄だったと感じるだろう」と彼は続けた。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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