ウォール街での栄光と挫折を経て、暗号資産という新たな領域に転身
軍人家庭の7人兄弟の3番目として生まれたノボグラッツの経歴は広く知られている。卒業後に軍務に就く義務と引き換えに提供されるROTC奨学金を受けてプリンストン大学に進んだ彼は、ニュージャージー州兵として勤務した後、1989年にゴールドマン・サックスへ入社した。
ゴールドマンでの追放や金融危機による資産喪失を経験した後、ギャラクシーを創業
営業職からキャリアを始めた彼は、やがてトレーダーとなり、最終的には香港を拠点にゴールドマンのアジア取引部門を率いた。1998年にパートナーに昇格したノボグラッツは、翌1999年にゴールドマンが株式を公開すると、巨額の富を手にした。だがその翌年、ゴールドマン・サックスの中南米部門プレジデントに昇進した直後に、彼は会社を追われることになる。本人が『ニューヨーカー』誌に語ったところによれば、その理由は「ロックスターのように遊び回っていたから」だったという。
アリゾナ州で更生プログラムを受けた後、ノボグラッツはウォール街に復帰した。2002年、ニューヨークのプライベートエクイティ会社フォートレス・インベストメント・グループに加わり、マクロ取引に特化したヘッジファンドを率いるパートナーに就任した。彼はそこで大きな成果を上げ、フォートレスが2007年に上場した時点で、彼のファンドは運用資産90億ドル(約1.4兆円)に達し、彼を含む5人のパートナーはビリオネアとなった。
しかし2008年、金融危機がノボグラッツのヘッジファンドと彼の資産を直撃した。ファンド自体はその後回復したが、スイスフランやブラジル金利を巡る一連の誤った賭けが響き、ノボグラッツは2015年にファンドを閉鎖した。その頃から、彼は暗号資産に強い関心を抱き始める。報道によれば、彼は1ビットコインあたり65ドル(約9945円)程度の水準で、総額700万ドル(約10億7000万円)分を購入したとされている。
暗号資産の投資では、不安や動揺と向き合い続ける力が試される。そして、何度でも立ち上がる姿勢を求められる。大学時代にレスリングの選手だったノボグラッツは、まさにその気質を備えていた。
「彼はどんな逆境においても、常に前向きだ」と語るのは、ビリオネア投資家のスタン・ドラッケンミラーだ。ノボグラッツとは長年ファンタジーフットボールの仲間である彼は、かつてジョージ・ソロスの右腕を務めた人物だ。
理想主義を排したベテランとしての手腕を活かし、多角的な事業収益を拡大
ノボグラッツは2018年、「暗号資産版のゴールドマン・サックス」を目指してギャラクシーを創業した。彼は同社企業カルチャーを「4分の3がゴールドマンだ」と語り、残りの4分の1はジャンク債取引で一世を風靡したドレクセル・バーナムだと表現している。これは、ジャンク債市場を切り開いたマイケル・ミルケンの存在を念頭に置いた比喩であり、ギャラクシーがデジタル資産市場の構築を担う存在であることを示している。
暴落したソラナの取得や融資事業の維持により、市場の混乱期に成果を上げる
理想主義的な投資の初心者があふれる業界にあって、ノボグラッツのベテラントレーダーとしての知見はその真価を発揮した。FTX崩壊からわずか17カ月後の2024年4月、ギャラクシーは、暴落で大きく値崩れしていたソラナを取得するために6億2000万ドル(約949億円)のファンドを立ち上げた。その当時、割安に放置されていたこのトークンの同社の持ち分は現在、12億ドル(約1836億円)超の価値に膨らんでいる。
2021年から23年にかけての「暗号資産の冬」で融資市場が壊滅的打撃を受けた際も、ギャラクシーは信用力と資本を維持していた数少ない企業の1つだった。同社は現在、ステーブルコインの発行体テザーやLednと並ぶ世界トップ3の暗号資産レンダーに成長し、2025年の貸出実行額は20億ドル(約3060億円)を超えた。
ビットコイン・トレジャリー分野に参入、多額の資産と手数料収入を獲得
最近では、マイケル・セイラーのマイクロストラテジーを模倣した上場企業が相次ぐ「ビットコイン・トレジャリー」分野にも参入した。ギャラクシーは現在、この戦略をとる20社以上の上場企業の投資銀行業務とトレジャリー管理を担っている。その結果、約45億ドル(約6885億円)の追加資産を加えた運用資産総額は170億ドル(約2.6兆円)に達し、年間4000万ドル(約61億円)超の継続的な手数料収入を生み出している。
2025年はギャラクシーにとって過去最高の年となった。5月に同社株はナスダックへ上場し、それ以降、ノボグラッツの純資産は2倍超の70億ドル(約1.1兆円)に拡大した。第3四半期には、記録的な取引高とデジタル資産トレジャリーの評価益を背景に、同社の純利益は5億500万ドル(約773億円)へと急増した。


