北米

2026.02.14 15:00

子会社による「ダイヤの架空取引」で株価急落、米投資会社を襲った苦境

ルガノ・ダイヤモンズの元CEOモルデカイ・ファーダー(写真左)Photo by Ryan Miller/Getty Images for Orange County Museum of Art

内部監査機能を外部委託へ切り替え、コンプライアンスの監督担当を新設

コンパスにとって、今回の不祥事への対応は想像以上に重い負担となっている。ルガノをめぐる混乱の収拾に、多くの時間と労力を割かざるを得ない状況が続いているためだ。コンパスはフォーブスに宛てた声明で、「不正がルガノ以外の投資先にまで広がっていると考える理由はない」としたうえで、サボCEOと経営陣が「人材、業務プロセス、組織体制の各面で見直しを進め、監督体制と内部統制の強化に取り組んでいる」と説明している。

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コンパスは、具体策として、これまで社内で担ってきた内部監査機能を外部委託に切り替えるとともに、新たに監査委員会に直接報告する「リスクおよびコンプライアンスの監督担当」を設置した。サボ自身も2025年、フライング・リザード・モータースポーツで続けてきたGTレースカーのドライバー活動から退いた。

ゴードン・ブラザーズに残存事業を売却、融資枠が満期を迎える節目に備える

ルガノの残存事業は、小売在庫処分を専門とするゴードン・ブラザーズの一部門、エンハンスト・リテール・ファンディングに2億ドル(約304億円)を下回ると見られる金額で売却された。現在もルガノは破産手続き下で事業を継続しており、シカゴやヒューストンの店舗に加え、カリフォルニア州ニューポートビーチのファッション・アイランドにある旗艦サロンなど、複数の店舗が営業を続けている。

今後の重要な節目となるのは、S&PからB+の格付けを受けている同社のシニア担保付き融資枠が、満期を迎える2027年7月だ。財務レバレッジを引き下げるため、コンパスは近く、ルガノ以外の投資先事業の売却に踏み切る可能性もある。サボは最近の投資家向け電話会議で、「我々のモデルはもともと、すべての事業が常に売却対象になり得るという考え方に基づいている」と語っていた。

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ボアや最大子会社5.11 Tacticalなど、比較的早期に買い手が見つかる可能性

オールスプリング・ファンズのポートフォリオマネジャー、ジム・トリンガスは、コンパスが出資する企業の中には、比較的早期に買い手が見つかる可能性のある案件があると考えている。その1つが、ヘルメットや靴、ブーツ向けに、靴ひもやバックルの代替となる特許取得済みの締結システムを手がけるボアだ。ボアは2025年に約1億9000万ドル(約289億円)の売上高を見込んでおり、コンパスは同社にこれまで約4億6000万ドル(約699億円)を投資し、株式の83%を保有するとともに融資も行ってきた。

コンパスが2012年に1億3000万ドル(約198億円)を投じたアーノルド・マグネティクスも、売却候補となり得る企業の1つだ。同社は希土類磁石や高性能金属部品を製造しており、売上高は約1億6000万ドル(約243億円)に上る。売上高ベースでコンパス最大の子会社は、法執行機関向けのタクティカル装備を製造し、2025年の売上高が5億4000万ドル(約821億円)に達していた5.11 Tactical(ファイブイレブン・タクティカル)だ。

コンパスの古参株主であるトリンガスは、現在も持ち株を手放していない。「コンパスの最大の子会社で大規模な不正が起きるとは予想していなかった」と、彼はため息交じりに語る。ただし、トリンガスは、最悪の局面はほぼ乗り越えたとして、今後は子会社の売却を通じて、負債をEBITDAの4倍以内の水準まで圧縮するのは難しくないと考えている。前向きな材料として、今回の一件によって多額の繰越欠損金が生じ、将来のキャピタルゲインに対する税負担を軽減できる可能性がある点を挙げた。

そうした中でも、ルガノを見限っていない長年の顧客の1人が、オレンジ郡の起業家のチャーリー・チャンだ。中国からの移民として1980年代初頭に20ドル(約3040円)を手に南カリフォルニアへ渡った彼は、外食チェーン「ピックアップ・スティックス」を築き上げ、2001年にTGIフライデーズへ売却した人物だ。

チャンは、ルガノのニューポートビーチ・サロンの会員だが、不祥事が発覚して以降、同社の宝飾品の購入は控えている。それでも、彼は他の寄付者を探しつつ、自身がカリフォルニア州アーバインで運営する、音楽とダンスの教育活動を行う非営利団体「オレンジ郡ミュージック&ダンス」に対し、ルガノが約束した100万ドル(約1億5000万円)の寄付が実行されることを、今も望んでいるという。「私は、今もルガノの会員のままだし、退会するつもりはない」と話すチャンは、かつて親交のあったファーダーのことを懐かしみながら、「私は前向きな人間だ」と語った。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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