コンパスがルガノを買収し、サボCEOは資金調達の利点を強調
ルガノで起きたとされる不正によって、多くの被害者が生まれており、最大の敗者は「CODI」のティッカーシンボルでニューヨーク証券取引所に上場しているコンパス・ダイバーシファイドとなっている。同社は、缶入り燃料を製造するステルノ・プロダクツなどの中堅企業の経営権を持つ投資会社として知られる。
コンパスは2021年9月、カリフォルニア州ニューポートビーチに拠点を置く宝飾会社ルガノの株式60%を、現金1億9800万ドル(約301億円)でファーダーから取得した。買収直後、コンパスのイライアス・サボ(54)CEOは、「ルガノは顧客に大きな価値をもたらす破壊的なビジネスモデルを持っており、CODI全体の成長力を加速させる変革を、前進させると信じている」と述べていた。当時のコンパスは勢いに乗っており、時価総額は2021年12月のピーク時に約20億ドル(約3040億円)に達していた。
その後の数年間、ルガノはコンパスのポートフォリオの中で、まさに輝く宝石のような存在に見えていた。同社は、マイケル・ブルームバーグの娘で著名な馬術選手でもあるジョージナを起用した広告や、ビリオネアのシーラ・ジョンソンを起用したキャンペーンを展開した。
資金力も十分だったようで、オレンジ郡の音楽学校への100万ドル(約1億5000万円)の寄付や、オレンジ郡美術館を10年間無料開放するための250万ドル(約3億8000万円)の拠出など、数十の非営利団体に対して総額3000万ドル(約46億円)の寄付を約束していた。業績も好調で、2024年の売上高は前年比50%増の4億7100万ドル(約716億円)に達し、EBITDAは2021年の3000万ドル(約46億円)から1億9500万ドル(約296億円)へと急増していた。
こうしたルガノの好業績は、コネティカット州グリニッジに拠点を置くコンパスが、他の多様な事業に向けての資金調達を進めるうえで大きな追い風となっていた。コンパスは現在、ステルノに加え、パタゴニアやヘリーハンセン、ルルレモンといったブランドのダウンジャケットに使われる断熱素材を手がけるプリマロフト、女性向け衛生用品を展開するハニーポットなど、計8社に出資している。
しかし、こうした異質な事業の集合体への投資から、コンパスがいったい何を得ようとしているのかという疑問も浮かぶ。フォーブスは今から1年前、同社のサボCEOにそう問いかけていた。サボは、コロニー・キャピタルでの勤務を経て、1998年に27歳でコンパスに入社した。コロニー・キャピタルは、CIBCオッペンハイマーや、ビリオネアのトム・バラックが率いたヘッジファンドだ。その約20年後、余暇にはレースカーを走らせることで知られていたこの経営者は、当時約10億ドル(約1520億円)の評価額だったコンパスのCEOに就任した。
サボの答えはこうだった。「ごく単純な話だ。EBITDAがそれぞれ5000万ドル(約76億円)規模の10社の事業に向けて、個別の資金調達を行うよりも、それらをまとめて5億ドル(約760億円)規模の1つの事業体として資金調達をしたほうが、はるかに低コストで済む」。
子会社の純資産に基づく管理料によって、約1064億円の在庫が報酬源に
サボが目指していたのは、いわば小さなバークシャー・ハサウェイを作ることだった。ただし、バークシャーとは異なり、コンパスは、子会社の経営を統括・支援する対価として、各社から管理料を受け取っている。SECへの提出書類の分析によると、その料率は、各投資先企業の「調整後の純資産」に対して約2%。自己資本利益率(ROE)が3年連続で12%を超えた場合には、資産の0.25%に相当するインセンティブ報酬が上乗せされる。加えて、投資先を売却した際には、利益の20%を経営陣が受け取る仕組みだ。ただし、一定の裁量余地もあった。たとえば断熱素材メーカーのプリマロフトは、2023年に管理料を1%に引き下げる条件を引き出していた。
ルガノの場合、資産の大半は在庫で構成されており、その在庫価値は(後に修正される前の数字で)2024年末時点で7億ドル(約1064億円)に達していた。その背景には、コンパスからの融資総額6億6000万ドル(約1003億円)があった。その結果、サボと経営陣は、実態に疑義のある在庫を前提に算定された管理料として、2024年に約1400万ドル(約21億円)を受け取っていた計算になる。
実際、2024年後半の時点で、サボはフォーブスに対し、こうした報酬体系こそが、ルガノを含む投資先企業を厳しく監督する動機になると説明していた。「我々は企業を能動的に所有している。戦略策定を支援し、説明責任の文化を築く。だから、投資先との関わり方や働き方は、はるかに踏み込んだものになる」。
一方で、在庫を大量に抱え、運転資金を必要とする企業を買収する方向にインセンティブが働くのではないかと問われると、サボはこう答えている。「そういう見方もできるだろう。ただ私は、ルガノのように運転資金を多く必要とする事業に資本を配分し、そこから得られる投下資本利益率を見る。それは、私がこれまで見たことのないほど、桁外れに高いものだった」。
連結決算の財務数値を修正し、約318億円の赤字へ転落
だが結果的に、それは出来すぎた話だった。ルガノの崩壊を受け、コンパスは同社の情報をほぼ削除した自社サイトの裏で、財務数値の修正を余儀なくされた。12月には、過去3年分の連結決算を修正し、ルガノの2024年の売上高が、当初の発表より85%も低かったことを明らかにした。
コンパス全体の2024年の連結売上高も、22億ドル(約3344億円)から18億ドル(約2736億円)へと引き下げられた。純利益は1280万ドル(約19億5000万円)の黒字から2億900万ドル(約318億円)の赤字へと転落し、貸借対照表上の資産は7億5000万ドル(約1140億円)減って33億ドル(約5016億円)となった。コンパスの株価は、過去1年で70%下落し、現在の時価総額は約5億ドル(約760億円)にまで縮小している。
約2736億円の債務不履行に陥り、銀行団と返済猶予で合意
ルガノがもたらしていたとされる利益が消えたことで、コンパスは18億ドル(約2736億円)の負債について債務不履行に陥った。このうち約3分の1は、数年にわたりルガノに融資していた分だ。コンパスは、バンク・オブ・アメリカとJPモルガン・チェースが主導する金融機関団に対し、返済猶予を求める協定を結ばざるを得なくなった。
新たな条件には、子会社に課していた管理料を半減し、四半期あたり1050万ドル(約16億円)を上限とすることが盛り込まれた。経営陣は、ルガノから得ていた過剰な管理料4300万ドル(約65億円)を株主に返還すること、そして将来の利益分配を放棄することで、ルガノ関連の損失の20%、約1億ドル(約152億円)分を自ら負担することも約束している。


