北米

2026.02.14 15:00

子会社による「ダイヤの架空取引」で株価急落、米投資会社を襲った苦境

ルガノ・ダイヤモンズの元CEOモルデカイ・ファーダー(写真左)Photo by Ryan Miller/Getty Images for Orange County Museum of Art

ルガノ・ダイヤモンズの元CEOモルデカイ・ファーダー(写真左)Photo by Ryan Miller/Getty Images for Orange County Museum of Art

米国上場の投資会社コンパス・ダイバーシファイドにとって、高級宝飾品を手がけるルガノ・ダイヤモンズは、投資ポートフォリオの中で「宝石」と呼ぶべき存在だった。ところがその後、ルガノをめぐる訴訟や詐欺・窃盗の疑惑、財務数値の修正、破産申請、そして慌ただしい事業売却が相次ぐことになった。

評価額約16億7000万円のダイヤ紛失をきっかけに、ルガノの架空取引が発覚

ルガノをめぐる疑惑は、ある高価なダイヤモンドの紛失をきっかけに表面化した。問題となったのは、リングにセットされた洋ナシ形の6.43カラットのダイヤモンドのやり取りをめぐるものだ。その評価額は、約1100万ドル(約16億7000万円。1ドル=152円換算)にも上る。ニューヨーク市拠点のスカルセリ・ダイヤモンズは、2025年1月にこのダイヤをマイアミにあるルガノのサロンに送ったと同年7月に起こした訴訟で主張した。スカルセリがそのダイヤモンドをルガノに送付したのは、相手が信頼に足る取引先であることを十分に確認した後だった。

同社は、数カ月をかけてルガノのデューデリジェンスを行い、総額4400万ドル(約67億円)に及ぶ14件の委託取引を問題なく終えていた。トラブルが生じた場合でも、ロイズ・オブ・ロンドンがそのダイヤの価値を補償することを確認していたという。

スカルセリは2025年1月28日、このダイヤをルガノのCEOであるモルデカイ(通称モティ)・ファーダーに送付した。ルガノ側は、マイアミでこのダイヤを潜在的な買い手に見せた後、求めに応じて返却する予定だったとされている。

しかし2月下旬になり、スカルセリが3月の香港ジュエリーショーに間に合うよう、問題のダイヤを含む複数の委託品の返却をルガノに求めたところ、返却されたのは他の品だけで、ダイヤは戻らなかった。訴状によるとファーダーは、WhatsAppで、「これはまだ対応中だ」と返信したという。

証券取引委員会への提出書類に反し、在庫や売上高を不正に操作

フォーブスは同年4月、米証券取引委員会(SEC)への提出書類に基づく監査済みの実績をもとに、ファーダーとルガノの驚異的な成功を記事化していた。しかしその数日後、ルガノの親会社である投資会社コンパス・ダイバーシファイドは、自社のスターCEOが「在庫をどのように調達・資金化しているのかを精査すべきだ」という情報提供を受けたとみられている。

当時、やり手として知られていたダイヤモンド業界のトップであるファーダーは、母国イスラエルを訪問中で、そのまま戻ってくることはなかった。コンパスはルガノの他の幹部とともに、不正会計の調査に着手し、売上高や売上原価、在庫、売掛金に虚偽の内容が含まれていることを突き止めた。

ファーダーが売上高を水増しするために架空の取引を作り出していたことや、実在しない、もしくはルガノの所有物ではない在庫を販売していたこと、外部から複数の資金調達を未報告のまま行い、それらを会社の貸借対照表に計上していなかったことが判明した。

元ブルガリ幹部が率いる体制下、約21億円の損害賠償請求に直面

こうした状況を受け、5月にルガノは、前年に同社に加わった元ブルガリ幹部のジョシュ・ゲイナーが率いる体制のもとで、複数のダイヤの所在を把握できていないことを認めた。その中には、スカルセリのダイヤモンドも含まれていた。スカルセリは、その2カ月後にルガノとその親会社コンパス、ロイズ・オブ・ロンドンを相手取る1350万ドル(約21億円)の損害賠償訴訟をオレンジ郡の上級裁判所で起こした。訴状では、行方不明となったブルーダイヤモンドについて、「今後数十年にわたって比類するものが現れないかもしれない宝石」と表現されていた。

宝飾業者スカルセリのオーナーであるダビデ・スカルセリは、コメントを控えた。彼は、ルガノから「150万ドル(約2億3000万円)以上の未払いがある」と主張する、約20数人のダイヤモンド投資家の1人でもある。

ファーダーを相手取った訴訟でルガノは、元CEOのファーダーがブルーダイヤモンドを盗んだと主張した。ルガノはその間、ロンドン、コネティカット州、ワシントンD.C.のショールームを閉鎖したが、現在も6店舗に加え、移動型の馬術関連ブティックの運営は続けている。同社は2025年11月に米連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請し、今年1月中旬に、小売在庫処分を専門とするゴードン・ブラザーズの一部門に売却された。

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翻訳=上田裕資

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