AIエージェントが、ゲーム世界の住人や敵を強化し永遠に変えようとしている

Shutterstock

すべて素晴らしく聞こえるが、何が問題になりうるのか

AIとゲームの融合がこれまでにもいくつかの論争を巻き起こしてきたのは確かである。そしてエージェント型AIが、従来は人間に委ねられてきたタスクを実際に遂行するという新たな一線を越える以上、今後さらに問題が増える可能性がある。

advertisement

まず、技術がまだ「十分な域に達していない」ことがしばしば露呈する。AIのハルシネーション(もっともらしい誤情報を生成する現象)は依然として深刻な問題であり、エージェントは優れた推論・計画能力を持ちながらも、この問題に対しては非常に脆弱なままである。

エージェントの振る舞いは、悪意ある操作にも弱い。前述した『フォートナイト』のダース・ベイダーは、導入後すぐに悪用され、罵倒語や同性愛差別的な中傷を口にするよう仕向けられてしまった

さらに、この技術がゲーム内課金を促す手段に使われるのではないかという懸念もある。たとえばAIがプレイヤーと親しくなったり、あるいは勝利を妨害すると脅したりすることで、課金へと誘導するといった形である。

advertisement

エージェント型ベイダーは別の面でも物議を醸している。合成AI音声を使用したことで、人間の俳優を代表する団体から抗議を受けたのである。

これは、ゲームにおけるエージェント型AIのさらに暗い側面──ダース・ベイダーだけに「ダークサイド」とでも言うべきか──を示唆している。すなわち、人間の雇用への潜在的な影響である。

エージェント型AIはしばしば「バーチャルワーカー」(仮想労働者)と呼ばれる。近年大規模な人員整理が相次いだゲーム業界では、マイクロソフト、ソニー、エレクトロニック・アーツ(Electronic Arts)のようなグローバル企業が、本来なら人間の生計を支えるはずの仕事にAIを使うことに対して、非常に強い警戒感がある。

一方で、Manus(マナス)のようなエージェント型AIツールにより、長時間コードを書かなくてもゲームを作りやすくなるため、エージェントはゲーム開発の参入障壁を劇的に引き下げる存在として歓迎する向きも多い。

理論上は、小規模スタジオや個人開発者でさえも、コードベースやグラフィック、サウンドといったゲーム内アセット(素材)を、従来必要だった時間よりも大幅に短い時間で生成できるようになる。

これにより、AAAタイトル(巨額の予算を投じた大作ゲーム)を制作する大手多国籍企業との競争条件が平準化され、新たな創造性とイノベーションの波が生まれる可能性がある。

インタラクティブ・エンターテインメントの未来

今後を見据えると、エージェント型AIとビデオゲームの融合が極めて大きなインパクトをもたらしうることは明白だ。

私たちと同じように振る舞うキャラクターとの会話や交流は、インタラクティブ体験の新たなフロンティアを切り開くだろう。しかし同時に、対処すべき課題も存在する。

AIエージェントの振る舞いはまだ完全には解明されていない。ならばゲーム内で解き放つ前に、エージェントがプレイヤーを操ろうとするリスクを最小化する措置を講じるべきではないだろうか。たとえば、課金を促すためにエージェントが友人を装ったり、意味のある愛着関係を形成したように見せかけたりすることを許容するのは、倫理的に問題があると思われる。

そして、エージェントの行動や意思決定を通じてゲームプレイの方向性を左右させること──つまり「物語を語る」役割をAIに委ねること──は、クリエイティブな主導権を放棄することと同義なのだろうか。

自らの技術と生計が脅かされていると感じている数千人のゲーム業界クリエイターたちが訴えてきたように、イノベーションの追求は常に、人間の創造性への敬意とのバランスが保たれなければならない。

これらの問いに答えることができれば、エージェント型AIはゲームを永遠に変革する可能性を秘めている。無限に精緻な世界を探索し、驚くほどリアルなシミュレートされた人々が暮らすその世界を体験する力を、私たちに与えてくれるだろう。『スタートレック』(Star Trek)のホロデッキ(乗組員が仮想世界を体験できる架空の装置)に、それほど遠くないものが実現するかもしれない。

一方で、対応を誤れば、クリエイティブな仕事がバーチャルワーカーに吸い上げられ、多くの人間が感情的なつながりを持ちにくいと感じるAI生成エンターテインメントの波に飲み込まれるという、悲惨な未来を招きかねない。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事