起業家

2026.02.16 12:30

金融業界の「頭痛の種」をAIで解消──レグテック新興ZeroDriftが挑むコンプライアンス改革

Shutterstock.com

Shutterstock.com

大手金融サービス企業にとって、コンプライアンス業務は多大な時間とコストを要し、大きな負担となっている。ニューヨークに本拠を置くスタートアップ、ZeroDrift(ゼロドリフト)は、独自のAI技術を駆使してこの課題の解決に挑んでいる。同社は2月10日、プレシードラウンドで200万ドル(約3億円)の資金調達を完了したと発表した。

昨年、CEO(最高経営責任者)のクメシュ・アルーモーガンが創業したゼロドリフトは、金融サービス企業が作成する各種コミュニケーション文書の点検を担う専門家を主な顧客としている。その対象は、資金調達に関わる証券会社の説明資料から、ウェルスマネージャーが顧客向けに作成する文書まで多岐にわたる。「こうしたコミュニケーションの発信を阻む最大の障壁は、常にコンプライアンス対応だ。彼らは、違反が発生して罰金につながる事態を非常に恐れている」と、アルーモーガンは語る。

ゼロドリフトが提供するAIエンジンは、米証券取引委員会(SEC)や金融業規制機構(FINRA)などの規制機関のルールに加え、顧客企業独自の規定やプロセスを学習して取り込む。金融サービス企業が公開前の資料をこのエンジンにかければ、コンプライアンス上の懸念点が即座に特定され、改善策も提示される。

「我々のソリューションは、いわば英文校正ツール『グラマリー(Grammarly)』のコンプライアンス版だ。本来、コンプライアンスは組織の動きを停滞させる門番ではなく、業務を加速させるためのガードレールであるべきだ。我々は、業務のスピードを落とすことなく、コンプライアンス対応を自動化することを目指している」とアルーモーガンは話す。

ゼロドリフトのようなツールには、大きな需要が見込まれる。現在、金融サービス企業はコンプライアンス対応に巨額の費用を投じている。英国の金融サービス業界団体「TheCityUK」が発表したデータによると、一般的な企業の年間営業コストのうち、コンプライアンス費用が占める割合は2.6%に達し、その総額は数億ドル規模に及ぶという。違反が発覚すれば、コストはさらに膨らむ。2024年には、世界全体で金融サービス企業に対し、計45億9000万ドル(約7020億円)もの罰金や制裁金が科されている。

一方で、金融サービス企業は保守的なことで知られており、規制やコンプライアンスが関わる領域では、その傾向は一層強まる。世界経済フォーラムの調査によれば、金融業界全体では年間350億ドル(約5兆3500億円)がAIに投じられているものの、コンプライアンス対応を新興テクノロジーに委ねることに躊躇する企業は少なくないとみられる。

次ページ > 元ゴールドマン幹部が参画、有力VCも認めた成長性

編集=朝香実

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事