私たちはなぜ犯罪の世界へと堕ちていくウォルター・ホワイト(米テレビドラマ『ブレイキング・バッド』の主人公)を応援してしまうのか。なぜ、タイウィン・ラニスター(米テレビドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の登場人物)の冷酷な現実主義や、トニー・スターク(米コミック『アイアンマン』の主人公)の規則破りで傲慢な振る舞いにひかれるのか。
大衆文化においては、純粋で揺るぎないヒーローの時代はすでに終わり、今やアンチヒーローの時代へと移り変わっている。アンチヒーローとは複雑で大きな欠点を抱え、道徳的にはグレーな手段を使って目的を達成する主人公だ。私たちがアンチヒーローに魅了されるのは自分たちとかけ離れた存在だからではない。むしろ、私たちの内側にある根本的で、しばしば抑え込まれてきた部分を反映しているからだ。アンチヒーローは私たちが普段抑制している衝動に従って行動する。支配欲、制度が機能しないときにルールを曲げることをいとわない姿勢、競争社会において自己利益の優先といった衝動だ。
心理学的にはこうした「ダーク」な衝動は異常ではない。人間の人格構造の不可欠な要素だ。
こうした心の側面を探れるよう、私は科学にヒントを得た診断テスト「The Anti-Hero Test」を作成した。このテストを受けることで、あなたの心理的特性を反映する象徴的な架空の敵対者が分かる。これは、あなたが生き抜くために使っているかもしれない無意識の戦略を明らかにするものだ。
クイズを超えて重要なのは、これらの概念を支えている厳密な心理学的研究を理解することだ。学術心理学で「ダークな特性」という言葉を使うとき、そこに道徳的な非難は含まれていない。我々が言及しているのは特定の測定可能な人格特性であり、これらは強烈な場合は社会的に忌避されるが、誰の中にも普遍的に存在するものだ。
これらの特性を理解する最も代表的な枠組みは「ダーク・トライアド」と呼ばれている。数十年にわたる研究から、私たち全員の中に程度の差はあれ存在する3つの人格特性が示されてきた。これらはそれぞれ異なりつつも、重なる部分もある。
ダーク・トライアドとは
ダーク・トライアドの第一の人格特性はナルシシズム(自己愛)だ。潜在的な範囲では単なる虚栄心ではない。地位の追求や特権意識、外部からの承認に対する強い欲求が特徴の強力な衝動だ。健全な自己愛的野心は、批判に直面してもリーダーシップを取ったり、自分の考えを主張したりする原動力になる。過剰になると「社会的に有害」な領域へと傾いていく。
第二の特性はマキャベリアニズム(策略性)だ。ルネサンス期の思想家ニッコロ・マキャベリに由来するこの特性は、計算高く現実的なアプローチを指す。マキャベリアニズムが強い人は戦略的で、人をチェスの駒のようにとらえ、長期的な目標を達成するために人間関係を操作することもいとわない。否定的に見られがちだが、高い戦略的知性や、複雑な官僚制度を巧みに渡り歩く力とも関連している。
第三の特性は、明らかな兆候が見られないサイコパシー(精神病質)だ。診断上の人格障害とは異なり、この特性は普通、衝動性の強さやスリルを追求する行動、共感能力の低さとして表れる。アンチヒーローが現状を打破するために必要な巨大なリスクを背負えるのは、他の人なら躊躇するような不安や罪悪感に縛られないからだ。



