人間の脳は言葉よりも画像を速く処理するようにできている。人々は端末で延々とネガティブな情報を見て過剰に刺激を受けているが、画像を速く処理するという特性はむしろリーダーシップ上の強みになっている。
インフォグラフィックが登場するずっと前から、人々の足並みをそろえ、意思決定を前に進めるためにリーダーらはメモ帳の絵やホワイトボードのスケッチといった基本的なビジュアル資料を使っていた。変わったのは、視覚コミュニケーションの力ではなく、その重要性だ。リーダーたちは現在、微妙なニュアンスが失われやすいデジタルプラットフォーム上で作業をしている。その環境ではビジュアル素材はもはや装飾ではない。戦略なのだ。
ビジュアル素材を用いるメリット
人は言葉よりも画像をよく記憶するという考え方から、心理学者のアラン・ペイビオは「画像優位効果」を提唱した。これは、情報は言葉で提示されるよりも、画像として提示された方が記憶に残りやすいというもので、数十年にわたる認知研究によって支持されている。その背景には二重コーディング理論がある。この理論によると、画像は言語ラベルと視覚イメージの2通りで記憶に保存される一方、言葉は言語的にしか保存されないことが多い。
この認知的優位性は職場での意思決定にも直接影響する。米経営者協会は、スタンフォード大学の研究者ロバート・ホーンの研究に関連するデータを引用し、視覚言語を使うことである程度の成果向上が見られると指摘している。
・意思決定と反応が速くなる:視覚ツールは速い情報処理や行動に貢献する。ある研究では、全体像を示すマップを含むプレゼンを受けた参加者の64%が即座に意思決定した一方、比較グループは反応に時間がかかった。
・会議が短くなり、生産性が高まる:視覚言語を使うチームは会議の時間が短い。会議時間が24%短縮されるだけでも、組織全体では大きな効率向上につながることが研究で示されている。
・合意形成がしやすくなる:視覚資料を使って取り組んだグループは、文言だけに頼ったグループよりも合意に至る割合が21%高かった。
リーダーにとってこれは重要だ。ビジュアル素材は考えを具体化する。雑音を断ち、注意を引きつける。
信頼を築くツールとしてのビジュアル素材
ビジュアル素材はリーダーが複雑な意思決定を抽象的ではなく視覚的に説明するときは特に透明性を高める。同時に、リーダーの存在感や責任感を伝え、人間味を感じさせる。これは文言中心のコミュニケーションでは達成しにくい効果だ。
視覚コミュニケーションの主要なタイプ
有能なリーダーは、目的に応じて異なる視覚ツールを使い分けている。それぞれが異なるメッセージを伝える。
・データの可視化(グラフ、ダッシュボード):厳密さを示す。リーダーが直感だけでなく証拠に基づいて判断していることを示し、共通の事実を軸にチームの方向性をそろえる。
・ホワイトボードやスケッチ:協働を示す。未完成なビジュアル素材は参加を促し、完成された答えではなく思考の途中であることを伝える。
・スライドや図解:構造と方向性を示す。控えめに使えば優先順位や順序、意思決定のロジックを明確にする。
・ビデオメッセージ:共感を伝える。表情や声のトーン、話す速度が感情に関する情報を運び、特にリモートチームではつながりを強める。
・アイコン、シンボル、イメージ:アイデンティティを示す。数値だけでは伝えきれない文化や使命、組織の価値観を強化する。
多くのリーダーが犯しがちな誤りは、すべてのメッセージに同じ形式を使うことだ。最も有能なリーダーはその場に合った視覚ツールを意図的に選んでいる。
視覚コミュニケーションは、デザインが洗練されたものや制作費が高いもののことではない。意図がすべてだ。ビジュアル素材を使うリーダーは、人が実際に情報をどう受け取るかに合わせて伝え方を調整している。単純化はするが内容を薄めることはない。



