一人起業というアプローチの正しさを立証しているスタートアップは、例えばPolymarket(ポリマーケット:政治経済、スポーツなど将来の予測イベントの結果に暗号資産を使って賭ける予測市場プラットフォーム)や、Vercel(バーセル:WebサイトやWebアプリを公開するためのサービス)、Wonder Ventures(ワンダー・ベンチャーズ:スタートアップ投資を行うVC)といった企業だ。
しかしながら同リポートは、こうした一人スタートアップの多くが一人起業の枠にとどまらない点も指摘している。一人で創業した経営者が、最初の従業員を雇うまでに要した日数の中央値(メジアン)は399日で、複数の創業者を持つ企業の480日よりも短くなっているという。
これとは別のプロジェクトとして、「Top 10 AI-Native Leaderboard」というランキングがあり、史上初の一人経営の10億ドル企業誕生に向けたレースの状況を見ることができる(これは、節約につながるお得情報を提案するサイト「Super.com」の共同創業者で、取締役会メンバーのヘンリー・シーが運営するランキングだ)。現時点でこのランキングでトップに立っているのは、ドバイに拠点を持ちメッセージング・サービスを提供するスタートアップ、Telegram(テレグラム)だが、こちらは現在、数十人の従業員を抱える企業だ。
一人経営の10億ドル企業を、ゼロから作り上げるには
チャラール、ラップ両氏のリポートで用いられている方法論の重要な部分は、「現実問題として、企業には創業者に加えて、正規雇用の従業員が1人以上必要」という先入観を退ける発想に基づいている。
両氏はまた、マーケティングや営業、法務など、事業を興す際に必要とされる要素を検証した。例えば、他のプレミアム価格オプションへの入口として「フリーミアム」加入契約を設定し、これを用いて事業規模を拡大するメソッドが採用可能かどうかなどを検討した。
「こうした方法でうまく行かなければ、自分の会社の営業チームの中に、さらに営業チームが必要ということになる」とチャラール氏は解説する。「しかも、大規模な営業チームが必要なら、一人企業を10億ドル規模にするのは実質的に不可能だ」
リポートによると、両氏が発掘したビジネスモデルには以下のようなものがある:
・業界に合わせたAIモデルのカスタマイズをするスイート
・ソーシャルメディアを使ったキャンペーン向けの広告マッチング
・中小の小売業者向けの、AIを用いた自動化されたキャンペーン
・農業サプライチェーン向けの、インテリジェントなリバースオークション
・自立走行車の運用を行う車両管理プラットフォーム
・インディゲーム開発者向けのノーコード・プラットフォーム
両氏は、前述した「Solo Unicorn Lab」で、50のアイデアについて詳細な青写真を公開している。さらに同ページには、事業を立ち上げたい起業家向けに、ピッチ(提案資料)の作成と推敲を支援する「VC sparring partner(VCスパーリングパートナー)」ツールも用意されている。
ラップによればこのページの目的は、未来の創業者に対して、キャリアに関して未知の領域に漕ぎ出すのではなく、現在の経験を活用できるコンセプトを絞り込むよう促すことにあるという。
「AIを使うにあたっては、専門家であるべきだ。つまり、AIそのものの専門家ではなく、自分の得意分野の専門家ということだ。目指すべきはパイロット(操縦士)であり、AIはそのコパイロット(副操縦士)だからだ」と、ラップは説く。


