インターネットが当たり前の環境で育った「ミレニアル世代」のショッピング動向には興味深い変化がある。家や車、高級ブランド品の需要は減少する一方で、クオリティの高い「本物」を求める傾向があるのだ。米国のミレニアル世代の支出額は年間6,000億ドル(約72兆円)にのぼる。
Ann WangとJessica Willisonはこの傾向に注目してきた。2人はEnrouというソーシャルインパクトを主眼に置いたショッピングサイトの共同創業者だ。Enrouは世界各地のハンドメイド商品を販売している。
「製品を通して、作り手のぬくもりを感じてほしいんです。現地に足を運び、そこで感じた思いをサイトに込めています。Enrouでは、様々な国を旅するように、ショッピングが行えます」とWangは語る。
創業から1年余りの同社は、世界各地の57のコミュニティーにある31の業者と取引をしている。WangとWillisonがここでしていることは、ただの販売事業ではない。まずこのビジネスの重要なパートとして、製品誕生の秘話を伝える作業がある。靴やバッグ、装飾品などの作り手と、ショッピングサイトを通してそれを購入する買い手をつなぐのだ。またそういった品々を作るコミュニティーにビジネスの基盤となるものを提供することも、重要な仕事だ。
「賃金や、作り手への支払い方法をどのように構築するかは、その地域の習慣やニーズによります」とWillisonは言う。現地の起業家に小額の融資を用意したり、コミュニティーのために資金を積んだりと、その形は様々だ。積み立てた資金は、インターネット環境の整備や学校の給食プログラム、その他その地域で今後も継続的に役立つ計画に用いられる。
「現地でモノづくりをしている人たちは大抵、自らの未来を築く手段がありません。Enrouはそういった個人に未来を築く手段を提供することを理念としています」とWangは続けた。
これこそが、Enrouが2014年にForbes主催の「Under 30サミット」で優勝賞金40万ドル(約4,800万円)を獲得した事業構想だ。「サミットでは全力で売り込みました。私たちはあの3日間、アドレナリン全開で走り通したのです」とWangは語る。
Under 30 サミットの1ヵ月後、彼女たちはEnrouを立ち上げた。今年5月のウェブサイト改良以来、サイトへのアクセス数は400%以上増加した。その後もアクセス数は増え続けている。
「Enrouはまだ完成形ではありません」とWangは話す。サミットの賞金以外でEnrouが得た資金は、創業当初の20万ドル(約2,400万円)のみ。しかも未だにマーケティングコストはほぼゼロだ。「そのことをとても誇りに思っています。広告を介さずにEnrouのサイトを見つける人が本当にたくさんいます。そういった人たちはサイトを訪れるたびに、よりじっくりと時間をかけて見てくれます」とWangは話す。
WangとWillisonの2人は、これまでSmashd Labsに参加していた。Smashd Labsとは、Atom Factory を設立したTroy Carterが主催する10週間のビジネス強化プログラムだ。その前には、TEDx talkで日常の中でできる社会貢献について語り、TV番組Shark Tankのセットを訪れMark Cubanとビジネスの話をし、その合間には繁忙期となるホリデーシーズンに向けてEnrouの体制を整えた。
「エチオピアの商品もあれば、グアテマラのものもあります。世界中のハンドメイド商品を届けられるのはEnrouならではのサービスです」とWillisonは言う。彼女たちの長期的な夢は、大規模な組織と手を組み、現在よりさらに直接的な方法で商品の作り手を支援することだ。
「社会的インパクトを与える真のソーシャルショッピングサイトであるため特に困難なのは、恐れず素早く行動に移すことです。しかも、それを限られた資金で行うのです。私たちが最も大事にしなければならないのは、人々とのつながりだということを学びました」と Wangは話した。