巨人グーグルが演じる壮大な「物語」があるとしたら、現在のグーグルはどんなフェーズにいるのだろうか? 破竹の勢いで拡大を続ける彼らは、自らのビジネスモデルをもぶち壊す。 広告市場に潜む200億ドルの金鉱を掘り起こす姿は、まるで広告界のラスボスだ。
(中略)2006年、グーグルはユーチューブを16億5000万ドルで買収した。ネット界で最大級規模の買収と言われたが、もはや安い買い物だったと断言できる。控えめに見積もっても200億ドルまで価値を高めたからだ。
彼らは自らの収益の柱であるネット広告を変えようとしている。「ユーチューブ・スペースLA」もその一環だ。(中略)
そこで今、広告業界で最大の金鉱、つまり高級誌やテレビで見るブランド広告、イメージ広告にグーグルは進撃をかけているのだ。
調査会社イーマーケッターによると、ネット上のブランド広告市場は今年180億ドル規模になる。2018年までに倍増し、ダイレクトな検索連動型広告を抜き去るという。しかもさらなる成長の余地を残して、だ。
現在イメージ広告が大半を占めるテレビ広告の市場規模は、世界全体で2,000億ドル。しかし若年層がユーチューブやネットフリックス、スナップチャット、インスタグラムなどで多くの時間を費やし、テレビ番 組は録画してCMを飛ばして見る昨今、巨額の広告予算を掴んできたテレビの影響力は弱まっている。
ネット広告の業界団体IABが広告会社の重役5,000 人にアンケートをとったところ、来年中に一定の広告支出がテレビからデジタル動画に流れると予想する者は、回答者の約75%に上った。
そこでグーグルがつくったのが、まるで秘密の隠れ 家のような「ブランドラボ」だ。(中略)
検索連動型のクリック広告からストーリー型のブランドイメージ広告にシフトチェンジするグーグルについて、デジタル広告企業レイザーフィッシュのピート・スタインCEOはこう言う。「グーグルは大金を呼び込むのに十分なプラットフォームを持つ、数少ない企業です」
4億ドルをかけて「ブランドラボ」を立ち上げると、早々と「大金」が転がり込んだ。
コカ・コーラやホンダを顧客に抱える広告代理店メディアベスト社が、今年のグーグルの動画広告やディスプレイ広告、モバイル広告に数千万ドルを支払う年間契約に合意した。グーグルにとって、ネット広告を前払いで売る契約は初めてだった。さらに11月には デジタスLBi社とレイザーフィッシュ社が1億ドルの契約に合意した。
投資家も強気になり、株価は最近、上場来高値の1150ドル以上をつけた。資産管理会社ソラリス・グループの投資担当者は、グーグルが2020年までにテレビの広告料の約6%、金額にして年間200億ドルを獲得できると予測する。今年の総売り上げが600億ドル前後であることを踏まえれば、支配権を確保しそうだ。(中略)
「まき散らして祈るだけのテレビ広告は、40%が見向きもされていません。消費者データを持つグーグルがテレビと同範囲にアプローチできるのです」(以下略、)