キャリアにおける年齢差別は採用や昇進、リーダー育成の仕組みに浸透し得る組織の感染症だ。人材の年齢にかかわらず才能を誤って評価する判断を形づくる。年齢差別の専門家であるモーリーン・ワイリー・クラフはこれを「社会的に容認されている偏見」と呼んでいる。
キャリアにおける年齢差別の問題は多くの組織で採用や昇進、解雇の構造的欠陥になっている。ここでもう1つ重要な点がある。それは、段階的にスキルや知識を習得し、キャリアアップしていくための人事制度「キャリアラダー」という考え方自体が幻想であることだ。
何十年もの間、キャリアは予測可能な弧を描くと考えられてきた。若い頃は意欲に満ち、中年期にパフォーマンスのピークを迎え、その後は緩やかに衰退していくというものだ。採用モデルや出世街道、人事の方針に都合よく当てはめられてきた整った物語だ。
それは全く間違っている。
年齢、段階、そしてキャリアラダー
人はそれぞれ異なる年齢や段階で花開く。21歳でアップルを創業し、会社から追い出されても再び戻り、決して迷うことのなかったスティーブ・ジョブズのように、最初から順調に成長する人もいる。
一方で、ピーター・ドラッカーのように65歳を過ぎてから最も影響力のある経営書を発表し、業界を再定義した人もいる。ミュージシャンのジョニ・ミッチェルやスティーヴィー・ニックスのように若くして成功し、その後も高齢になるまで輝き続けた人もいる。音楽業界以外でも政治家のナンシー・ペロシや投資家のウォーレン・バフェット、ハフィントン・ポストの創業者アリアナ・ハフィントン、動物学者のデイビッド・アッテンボロー、パイロットのエド・ドワイト、俳優のジェーン・フォンダなどを見れば一目瞭然だ。
もちろん、ハーランド・サンダース(あのカーネル・サンダース)がいなければKFCは存在しない。サンダースは中年期に11種類のハーブを使ったフライドチキンのレシピを完成させ、62歳で最初のフランチャイズ店舗を米ユタ州ソルトレイクシティに開業し、その10年後に事業全体を200万ドル(約3億円)で売却している。
「キャリアの全盛期」という発想から脱却を
これほど多くの証拠があるにもかかわらず、職場はいまだに「キャリアの全盛期」という幻想に執着している。
若すぎると経験不足だと言われる。年を取りすぎていると時代遅れだと切り捨てられる。
その結果、極めて大規模な才能の浪費が起きている。
言うまでもなく、労働者はオリンピック競技のように特定の年齢や人生の一時期にピークを迎えるものではない。それにもかかわらず、多くの組織はまるでそうであるかのように対応している。
組織が「キャリアの全盛期」や一貫したキャリア年表という社会的通念に固執すると、チームの革新を支える流動的知能や結晶性知能を犠牲にしてしまう。その結果、人材の供給ラインは縮小し、若手・中堅・ベテランの間に知識のギャップが生まれる。



