マイクロマネジメントを避け、自律性を育てようと急ぐあまり、多くのリーダーは反対方向へ振れすぎてしまった。つまり、受け身になってしまったのだ。受け身のリーダーシップはチームを信頼して任せる「手を出さない」やり方に思えるかもしれないが、従業員を混乱させ、支援も意欲もない状態にすることが多い。
専門誌『British Journal of Management』に掲載された研究では、少なくとも従業員の20%が職場で受け身のリーダーシップを経験していると推定している。だが、威圧的な上司のように目立つタイプとは違い、受け身のリーダーの行為は静かだ。たとえば難しい会話を避ける、問題が悪化するまで決断を先延ばしにする、本当に指導が必要な場面で姿を消すなど。
結果として、信頼が崩れ、成果が落ち、問題が放置されて悪化するばかりの職場文化が生まれる。朗報もある。受け身のリーダーシップは見つけて改善することができる。
受け身のリーダーシップとは
受け身のリーダーシップとは、管理職が行動せず関与しないというパターンを指す。こうしたリーダーは判断せず、フィードバックを避け、状況が深刻なものになるまで介入しない。
主に2つの形がある。
受動的回避型のリーダーシップ
受動的回避型のリーダーは問題をそらしたり完全に無視したりする。対立が起きても従業員に「自分で対処して」と言ったり、助けを求められてもフォローしなかったりする。
受動的攻撃型のリーダーシップ
受動的攻撃型のリーダーは問題に直接向き合わず、間接的に処理する。問題を起こした人ではなく、報告した人を責めたり、透明性のないまま水面下で決定を下したりする。
受け身のリーダーシップが有害な理由
受け身のリーダーシップは侮辱的管理よりましに見えるかもしれないが、専門誌『Frontiers in Psychology』に掲載された研究によると、従業員にも組織にも重大な悪影響をもたらす。組織にとって害になる理由は5つある。
1. 混乱と役割過多
明確な指示がないと、従業員は役割を把握できず対立が起きる。何を期待されているのか分からず、リーダーが整理したり委任したりすべき責任まで背負い込むことが多い。これが慢性的なストレスやバーンアウト(燃え尽き症候群)につながる。
2. 問題のある行動が放置される
リーダーが無礼な態度やお粗末なパフォーマンスを放置すると、そうした行動は許されるというメッセージを送ることになる。高い成果を出している人ほど、問題のある同僚が野放しになっているのを見て、「自分の努力には意味があるのか」と疑い始める。
3. 組織への信頼が崩れる
山積みの問題が放置されるのを目にすると、従業員はリーダーに対する信頼を失う。受け身のリーダーは自分たちを守ってくれない、必要な変化を提唱しないとみなす。やがて士気とエンゲージメントが崩壊する。
4. イノベーションが抑圧される
受け身のリーダーは部下へのコーチングやメンタリングをほとんどしない。そうした関わりは親密すぎるもの、あるいは面倒なものとみている。積極的な指導やフィードバックがないと、創造性のある従業員は自律性を制限されたように感じ、複雑な課題に挑む力も抑え込まれる。
5. 組織の外にも悪影響が広がる
顧客・クライアント対応が必要な職種では、受け身のリーダーシップが外部との関係性の質を下げる。支援されていないと感じる従業員は顧客と意義深い方法で関わろうとしなくなり、組織の評判や利益に悪影響が出る。



