経済・社会

2026.02.17 15:00

「もしも町がしゃべったら?」地域再生は妄想を使え!和歌山市の漁師町の挑戦 ~前編~

写真=加藤史人

共創のカギは「腕相撲?」「ディスコパーティー?」

地域で事業を行う上で、もう一つ大事なことが、セッション2でモデレーターを務めた和歌山市地方創生アドバイザーである山中哲男が提示した「共創」という言葉。地域創生ではよく聞くフレーズだが、実際は住民不在や事業者同士の対立など、うまくいかない場合が多い。古澤は、その理由について「誰がリスクテイクするか不明確だから」だという。では、リスクを取った事業者の場合はどう動いたのか。識者の経験を聞き出していく。

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和歌山市地方創生アドバイザー 山中哲男
和歌山市地方創生アドバイザー 山中哲男

瀬戸田の事例を岡に聞くと、「ホテルを開業する際、街の理解を得るために月1回の頻度でワークショップを開いていました。でも、なかなか関係は深まらない。ところがある時、飲み会で急に腕相撲をすることになったんです。私を含め我々の側がボロボロに負けたら、『お前ら大したことないな(笑)』と、そこから関係性が変わって、街の人と親しくなった社員2人が瀬戸田に住み着くことになり、さらに距離が縮まりました」と振り返る。

佐藤も、自ら手を挙げたスタッフが地域に住み込み、彼が住民との橋渡し的な存在になったことが大きかったというが、「よそ者を最初から歓迎してくれる所など、ないと考えた方がいい」という。それでも、「その街に住み、その街と一緒に歩んでいきたいという思いで始めた事業なので、結果で認めてもらおうと思った」そうだ。佐藤は、関係を築こうと、その地域で祭りを行い、ディスコパーティーを開いて、地域住民のなかに入っていき、今では認めてくれる人も増えたと感じている。しかし、それでも所詮は人間関係。「きれいごとで済まないことも多い。時間がかかることで終わりはない」と、くぎを刺す。

佐藤は祭りを通じ、岡は腕相撲を通じて謙虚に人間関係をつくっていったが、岡はもう一つ転機があったという。「ホテルを建てる際、もっと街の人が自分ごととして考えてもらいたいと思ったので、館内に大浴場をつくるのではなく街に銭湯をつくって、街の人たちが入る銭湯に、宿泊客も入ってもらうようにした。それから、街の人の応援をもっと感じられるようになった」と振り返る。

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バルビバーニ代表取締役 佐藤裕久
バルニバービ代表取締役 佐藤裕久

淡路島の祭りの話も含めて、事業を街に開いていく、共有していくことも、共創につながると山中は言う。では、雑賀崎、田野地区で事業を行う場合、どのような妄想が生まれるのだろうか。

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文=古賀寛明 編集=川上みなみ 写真=加藤史人

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