サイエンス

2026.02.13 18:00

恐竜以上、「史上最強の噛む力」を誇った巨大な古代ワニ

プルスサウルス・ブラシレンシスの頭骨化石(Shutterstock.com)

最強の咬合力を持っていても絶滅した理由

生体力学の観点から見ると、プルスサウルスの咬合力は、理論上の限界に肉薄している点で極めて興味深い。筋肉組織が単位面積あたりに生み出せる力には上限があり、また、骨が損傷することなく耐えられる負荷にも上限がある。プルスサウルスが現生のあらゆる動物をはるかにしのぐ咬合力を問題なく発揮できたという事実は、彼らの頭骨が、負荷を効率的に分散できるよう、高度に適応していたことを示している。

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プルスサウルスはまた、自然淘汰が一貫して、「より大きなサイズ、より強力な顎、食物網の頂点」という地位を優遇し続け、さらに現生動物の系統に影響を及ぼしているような「成長への制約」とまったくの無縁だった場合に、捕食動物がとり得る姿を体現する存在でもある。

これほどのパワーがありながら、プルスサウルスが絶滅したことを意外に思う人もいるかもしれない。だが、彼らの絶滅はおそらく、他種との競合とはほとんど無関係であり、ほぼ全面的に環境変化によるものだった。

中新世後期から鮮新世にかけて、河川水系が再編され、気候が移り変わるなかで、南米の湿地帯が縮小しはじめた。現在のアマゾン川が発達したことで、浅い淡水生息地のかなりの部分が干上がってしまった。プルスサウルスのような巨大な半水生捕食者は、これによって痛手を被った。大型で繁殖速度が遅い動物は、生息環境の喪失に極めて脆弱なのだ。生態系の変化が始まるやいなや、それまでプルスサウルスが占めていた生態的ニッチも消失した。

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生物学者にとってプルスサウルスは、進化史における咬合力の上限という値を提供する貴重な存在だ。ほとんどの人の想像とは裏腹に、史上最強の咬合力を進化させた動物は、恐竜でも、哺乳類でも、サメでもなかった。真の王者は、一般向けの科学コンテンツではあまり取り上げられない、意外な系統に属していた。

プルスサウルスは、進化的成功があくまでも文脈依存のものであることも思い出させてくれる。彼らが備えていた恐るべき形質は、彼らが生きた時代と場所には申し分なく適応していた。それでも、大規模な環境変化を生き延びるには、まったく役に立たなかったのだ。

forbes.com 原文

翻訳=的場知之/ガリレオ

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