サイエンス

2026.02.13 18:00

恐竜以上、「史上最強の噛む力」を誇った巨大な古代ワニ

プルスサウルス・ブラシレンシスの頭骨化石(Shutterstock.com)

比較対象として、これまでに測定された現生動物のなかで最大の咬合力をもつのはイリエワニ(学名:Crocodylus porosus)だ。2005年に『Proceedings of the Royal Society B』に掲載された論文によれば、約1万6000ニュートンの力を生み出せる。一方、ティラノサウルス・レックスの咬合力の推定値は、分析手法によってばらつきがあるものの、概して3万5000~5万7000ニュートンの範囲に収まる。

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つまりプルスサウルスは、控えめに見積もっても、地球の生命史上、地上で生きる脊椎動物として最強の咬合力を備えていた可能性が高いということだ。

現生動物のなかで最大の咬合力をもつのはイリエワニ(Shutterstock.com)
現生動物のなかで最大の咬合力をもつのはイリエワニ(Shutterstock.com)

ワニはなぜ、すさまじい咬合力をもつのか?

ワニが驚異的な咬合力を示すのは、それほど意外なことではない──なぜなら、彼らは「力を生み出すこと」に特化した、いわば専門家だからだ。ワニの頭骨は、まるで巨大なクランプ(万力)のような構造をしている。骨は厚く、縫合線が補強されており、力学的な優位性を最大限に発揮する幅広い顎(吻部)を持っている。現代のワニは、すさまじい力で口を閉じることができる(ただし、口を開くのに使う筋肉は比較的貧弱だ)。

プルスサウルスはおそらく、このようなデザインをいち早く最適化させた動物だったのだろう。彼らの頭骨は、現生種と比べてありえないほど大きく、厚みも大きかった。このため、筋肉が付着する箇所の表面積も著しく大きかった。吻部の形状から判断して、プルスサウルスの顎は、獲物の肉を切り裂くというよりも、丸ごと噛み砕くのに特化していた可能性が高い。大型の獲物を力で圧倒するには、これが最適な戦略だ。

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このようなパワフルな咬合は、見かけが印象的なだけでなく、当時の生態学的要求がいかに過酷なものであったかを物語っている。中新世における南米の大湿地帯には、大型で重装甲を備えた動物たちが豊富に生息していた。プルスサウルスが潜む水中には、分厚い甲羅をもつ巨大なカメや他種のワニが暮らしていたし、渇きを癒しに水辺を訪れる大型哺乳類や、体重数百kgに上る巨大なげっ歯類などがいた。

先述した2015年の論文で提示された生体力学モデルは、プルスサウルスが、こうした被食者の骨や甲羅をたやすく噛み砕く力を備えていたことを裏づけた。彼らは、桁外れの咬合力によって瞬時に獲物を殺す戦法をとり、長時間にわたる格闘や溺れさせるといった戦法には頼らなかったようだ(この点でプルスサウルスは、現代のワニとは異なっている)。

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翻訳=的場知之/ガリレオ

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