サイエンス

2026.02.13 18:00

恐竜以上、「史上最強の噛む力」を誇った巨大な古代ワニ

プルスサウルス・ブラシレンシスの頭骨化石(Shutterstock.com)

プルスサウルス・ブラシレンシスの頭骨化石(Shutterstock.com)

地球史上、最も強い咬合力をもつ動物と聞いて、ほとんどの人が想像するのは恐竜だろう。なかでも、話題を独占するのはティラノサウルス・レックスだ。獲物を骨ごと噛み砕く、この肉食恐竜のメディア露出の多さを考えれば、それも無理はない。

しかし、生物学者と古生物学者が、現代の生体力学的手法を用いた咬合力の測定に乗り出したところ、ティラノサウルスには意外なライバルがいたことが明らかになった。のちの研究により、これまで計測されたなかで最大の咬合力をもつ動物は、恐竜ではなかったことがわかったのだ──栄冠に輝いたのは、先史時代の巨大なワニ「プルスサウルス」だった。

この桁外れに大きなワニが生きたのは、恐竜が絶滅した数千万年後の時代だ。彼らは、中生代のどんな動物をも上回る咬合力を備えていた可能性がある。これほどの破壊力をもつ武器がどのように進化したのか、これまでの古生物学研究でわかっていることを解説していこう。

プルスサウルスの咬合力を推定する

2015年に学術誌『PLOS One』に掲載された論文にあるように、プルスサウルス・ブラシレンシス(学名:Prussaurus brasilensis)は、約1300~500万年前の中新世に生きていた巨大なカイマンの1種だ(カイマン亜科は、ワニ目アリゲーター科に属するワニのグループ)。

古生物学者たちは、プルスサウルス・ブラシレンシスを含むプルスサウルス属の化石を、南米各地で発見してきた。とりわけ、現代のベネズエラ、ブラジル、ペルー、コロンビアに豊富に生息していたようだ。

プルスサウルスが生きていた時代、アマゾン盆地の大部分は、湿地や河川、浅い湖沼が渾然一体となった広大な生態系をなしていた。こうした環境には、巨大なげっ歯類やカメ、大型魚、新世界ザル、他種のワニなどが暮らしていた。

プルスサウルスは、このような生態系の頂点捕食者として君臨した。全長は実に12.5m、体重は8.4トンに達したと推定されている(ティラノサウルス・レックスの全長は11~13m、体重は6~9トンとされる)。

プルスサウルスの想像図(LiterallyMiguel, CC BY 4.0)
プルスサウルスの想像図(LiterallyMiguel, CC BY 4.0)

先史時代の捕食者の多くは、断片的な化石しか発見されていないが、幸いなことに、プルスサウルスの規格外のサイズの頭骨については、極めて良好な状態の化石がいくつも発見されている。こうした頭骨化石をもとに、研究者たちは咬合力の推定を行い、信頼性の高い値を導き出すことができた。

一般に、咬合力の測定には、生きた動物と力覚センサーが必要だ。しかし絶滅種の場合は、生体力学モデリングに頼るしかない。これは、以下のような手順で行われる。

・頭骨の形状を再現する
・筋肉のサイズと付着箇所を推定する
・物理学と比較解剖学の原理を適用する

先述した2015年の『PLOS One』論文において、古生物学者たちは、プルスサウルス・ブラシレンシスにこうしたアプローチを適用した。その結果、信じがたいことに、プルスサウルスの咬合力は6万9000ニュートンを超えていたことが明らかになった。

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翻訳=的場知之/ガリレオ

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