TaiTanも冷静だ。「Xで流れてくるAIで作ったMV、クオリティすごいなとは思うけど、玄関に突然投函されるよくできたチラシみたいなもんで。目には入るけど、自分の人生に関与されるとも思えない」。
その上で、彼はこう続けた。
「AIが作った音楽にめっちゃ感動する未来も想定してるし、AIが作った『サウスパーク』みたいなのが出てきて、めっちゃ面白いってなる未来も全然あり得ると思う。でも、それとはまた別の話として、"俺がつくりたいからつくる"っていう動機そのものに人が心惹かれるとか、その気持ち自体にファンがつくってことは、たぶんなくならない。僕はそっちにベットしたいんですよね」
動機。意志。「やりたいからやる」という熱量。AIが代替できないのは、クオリティではなく、その手前にある衝動なのかもしれない。
コピーされないものに賭ける
ただし、衝動だけでは生き残れない。TaiTanは自分で会社を経営し、音楽活動も自前のレーベルで行っている。インディペンデントな体制で、ロッテやジョニーウォーカーのようなグローバルブランドと対等に渡り合っている。
「彼らと対等の交渉力を持つために、自分にしか出せないアイデンティティやノリ感を言葉で説明するようにしています。本来ならフォロワー100万人のインフルエンサーに頼んだ方がいいはずなのに、(フォロワー数万人の)僕とやるメリットは何か。また、協業とは僕を都合よくコントロールするということではないということ。それを最初にはっきり言いますね」
アーティストがビジネスの言語を獲得することは、資本主義に屈することではない。自分の動機を守るための武器になる。

セッションの終盤、マークスは「ネットに参加していないことがステータスになる時代が来る」と、興味深い予言をした。AIが加速させる均質化の時代に価値を持つのは、コピーされないもの。場所に根ざしたもの。そして、人間の意志そのもの。
「資本主義のプレッシャーがない人間の手から生まれたものほど価値が高まっていく」と言い、小さな料理屋や商店が根付く日本のインバウンドが活況な要因のひとつではないかと考えを示した。
TaiTanは最後にこう言った。
「AIがわーってなってくると、基本的にコピーされないレガシーとか土地とか、あと人間の関係性そのものに価値が出てくる。クリエイターはそういうところに比重を傾けて活動するといいんじゃないかな」
これはクリエイターに限った話ではない。ブランドをつくる人も、組織を率いる人も、問われているのは同じだ。コピーできないものは何か。
AIは平均点を出せる。SNSは情報を一瞬で均す。でも「この人と一緒にやりたい」「この人が作るから応援したい」という関係は、最適化できない。データでは測れない。時間をかけて、身体を伴って、築いていくしかない。それが、均質化の時代に残る価値なのではないだろうか。



