AIが高速で最適解を出してくれる時代に、人間は何をすればいいのだろう。 2025年12月9日・10日の2日間、東京・丸の内で開催された「FUTURE VISION SUMMIT 2025」には、その問いを抱えた人々が集まった。
ビジネス、アート、テクノロジー、アカデミア。言語が異なるはずの人々が、不思議と同じ方角を向いていた。効率や正解の先にあるもの。意味をつくること。人と人のつながりを編み直すこと。2日間の議論から浮かび上がった、次の時代の「OS」を3切り口でレポートする。
本記事は、作家/文化評論家のデーヴィッド・マークスと、ラッパー/クリエイティブディレクターのTaiTanが登壇した、「クールとダサいの境界」について。
「バズったら負け」。そんな価値観が、若い世代に広がりつつある。
AIが平均値を出し、SNSが情報を一瞬で均してしまう時代。あなたの作品は、クリエイティブは、ビジネスプランは、AIの出力と何が違うのか。その問いに、まっすぐ答えられるだろうか。
このセッションは、「クール」の定義の変化から対話がはじまった。一見遠回りに見えて、実はそこに鍵がある。
「何がクールかを聞く人は、絶対にクールじゃない」
アメリカでは昔からそう言われてきた、とマークスは笑う。かつて「かっこいい」は、希少な情報と結びついていたからだ。
1980年代、任天堂のボクシングゲーム『パンチアウト!!』には、最終ボスのマイク・タイソンに直接挑戦できる隠しパスワードがあった。「007-373-5963」。8歳の子どもでも、このコードを知っているだけで一目置かれた。

でも今、そんなパスワードはネットで一瞬で調べられる。情報自体にはもはや価値がない。TaiTanはこの変化を「差がつけられなくなった」と表現する。
「あるコンテンツが拡散されたとき、感度が高い人とそうでない人の間で、知るまでの時間差がほとんどない。早く知ったところで希少性が生まれないんですよ」
TikTokで見たものを買って、「俺、TikTokで見て買ったんだよね」と言う。誰でも同じ情報にアクセスできる時代に、それは自慢にならない。むしろ「バズってると逆にダサい」という価値観の逆転が起きている。



