PARaDE代表・中川淳が、企業やブランドの何気ない“モノ・コト”からライフスタンスを読み解く連載もついに最終回。今回は、連載を開始した当初よりもライフスタンスが社会に巡りやすくなってきたという変化についてお伝えする。この約2年で、一体何が起きたのか。
ライフスタイルは1枚の写真で伝わる。雑誌の見開き広告を見れば、そのブランドがどんな世界観を描こうとしているのかはおおよそ掴めるだろう。一方、企業やブランドがどんな価値観や態度で社会と向き合っているのかというライフスタンスは、写真1枚ではまず伝わらないという話を以前にもしたことがある。
かつてナイキが人種差別反対や多様性を訴えるキャンペーンを行った際、社会正義を掲げる一方で、労働環境や人事、経営体制などの構造が変わっていないのではないかと批判が起きた。ライフスタンスを直接メッセージとして訴えかけようとしても、うまく伝わらないこともある。
では、どうすればライフスタンスを自然なかたちで伝えることができるのか。
私は企業の長年の行動の蓄積による、微細な振る舞いからその本音を読み解けると考え、タクシーのレシートからコンビニのトイレといった日常の事例をもとに、企業のライフスタンスを炙り出してきた。しかし、今後はもう少しライフスタンスを身近に感じる機会が増えるかもしれない。本連載の締めくくりとして、その希望の燈についてお伝えしたいと思う。
コーポレートサイトで「本気度」を示す時代へ
その兆しは意外にも企業のコーポレートサイトに現れている。これまで企業のサイトに掲載されているビジョンや理念は、正直なところ、どれも似たり寄ったりのいいことが書かれているだけで、外部の人間が見てもその本気度までは測りづらかった。
ところが最近、その潮目が変わり、「なぜそのビジョンなのか(Why)」、「それをどう実現するのか(How)」、そして「現在どこまで進んでいるのか(Progress)」などを、驚くほど丁寧に開示する企業が増えたのだ。その最たる例が、中高生向けのプログラミング教育を手がける企業「ライフイズテック(Life is Tech)」である。
彼らのサイトを見ると、ビジョン、ミッション、つくりたい世界、バリューはもちろん、事業のアウトプットやアウトカムを示すロジックモデルを示し、その進捗状況を可視化し、B Corp(Bコープ:環境や社会に配慮した公益性の高い企業に与えられる)のスコアまで公開している。
これまで、こうしたロジックモデルやインパクトレポート、Bコープは、NPOやいわゆるソーシャルビジネスの専売特許のように思われてきた。だが、彼らのビジネスだけがそういった枠組みだけで展開している訳ではない。本来すべてのビジネスは社会的な要素を含んでいるはずだ。株式会社であっても、自分たちの事業がどのような社会課題を解決し、価値を生み出しているのかを証明するのは当然の責務である。
ソーシャルビジネスに求められるような高い透明性を示すことで、企業は「言っているだけ」ではなく「本当にやっている」ことを証明できるようになる。その意味で、ロジックモデルやインパクトレポート、Bコープなどのソリューションを活用しない理由はないだろう。



