これは、扁桃体を中心とした脅威システムが幼少期のストレスによって調整されていることの自然な帰結でもある。こうした状態ではポジティブな瞬間にも危険を探し続けるため、注意は警戒へと向く。その結果、喜びは儚く、十分に享受することができない。
目標はポジティブな体験を増やすことではなく、神経系がポジティブ体験をもっと受け止められるようにすることだ。最も簡単な方法の1つが、ポジティブ感情を意識的に味わうこと、つまり心地よい感覚に普段より少しだけ長く留まるようにするというものだ。例を挙げよう。
・好きなコーヒーを一口飲んだら、少し止まる
・優しい言葉をかけられたら、そのまま受け取る
・楽な瞬間を感じたら、胸や肩でそれを感じてみる
ポジティブな感覚に10〜15秒注意を向けるだけでも、安全と報酬に結びつく神経経路の強化が始まる。これは神経系に新しい経験だからといって危険であるわけではなく、反応しないようにする必要はないと学ばせる方法だ。これを続けると、気づかないうちに喜びが普段よりも少し長く持続するようになる。
2. 喜びを押さえ込む「認知ノイズ」を減らす
喜びがつかみどころなく感じられるのは、整理されていない思考にかき消されるからでもある。良い瞬間があっても、心の一部がすでに次に何が来るか予期していたり、やり残したことや心配事すべきことを考えたりすることがある。喜びが本当に必要とするのは意識を今に向けることだ。
これは単なる哲学的な話ではない。実験研究でもはっきり示されている。大学生を対象に行われたランダム化比較試験では、マインドフルネストレーニングを毎日2週間行っただけで不安やストレス、ネガティブ感情が大きく低下した。さらに重要なことに、反芻思考の長期的な減少が見られ、その効果は3か月後に一層強まった。
マインドフルネスのトレーニングを行うという介入で人生のストレス要因が排除されたわけではない。変わったのは、頭の中でぐるぐる考えたり予期したり、循環させたりする習慣だ。言い換えると、反芻が静まるとウェルビーイングは自動的に向上する。


