キャリア

2026.02.09 15:00

なぜ「失業してもいい」人が増えているのか? 仕事にアイデンティティを預けない時代に生き残る組織とは

Shutterstock.com

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仕事がみずからのアイデンティティを体現するものでないとすれば、それを失う痛みも小さくなる。

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何十年もの間、仕事は単なる収入源以上の存在だった。それは「あなたは何者か」という問いへの答えだった。肩書きは地位を示し、所属する企業は人々のアイデンティティの拠り所となった。昇進やキャリアの積み重ねは、自分自身や他人に語る物語を提供していた。そうした世界においては、失業は経済的打撃であるだけでなく、存在そのものを揺るがすような出来事だった。

変わりつつある仕事のアイデンティティ

しかし、その前提は今日の仕事を必ずしも反映していない。最近のデータは、仕事に対する感情的な中立性が高まりつつあることを示しており、仕事におけるアイデンティティ、そして人と仕事との関係性が大きく変化していることを示唆している。教育テクノロジー企業のヘッドウェイの調査では、回答者の45%が解雇されることに無関心だと答え、さらに10%は、逆に安心すると答えているのだ。

仕事を失うことを脅威として捉えていない人の割合が半数以上だとすれば、それは、人々の人生における仕事の意味が変わったことを示している。スキルは肩書きよりも容易に持ち運べる。人脈は組織よりも長く残る。職業的価値は、単一の雇用主の内部ではなく、複数の役割、プロジェクト、コミュニティを横断して築かれる。その結果、人々は自己認識を特定の仕事から切り離すことができるようになった。仕事はもはや、アイデンティティの中核をなすような存在ではなく、より広い意味での職業人生を構成する、1つの要素にすぎないのである。

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この変化は、若い世代の間で特に顕著だ。オンライン教育プラットフォームのELVTRが実施した調査によれば、Z世代とミレニアル世代の多くは、雇用主に長期的な安定やアイデンティティ、成長を期待していない。彼らが求めているのは、選択肢である。キャリアはますますモジュール化され、巻き戻し可能で、調整できるものとして捉えられている。その発想の下では、失業は人生設計の崩壊を意味するのではなく、契約の終了にすぎない。安定は、同じ場所にとどまることではなく、関連性から生まれる。だからこそ、Z世代の多くが、無意味だと感じる仕事にとどまるくらいなら失業した方がましだと答える理由が理解できる。

これは、調査会社のギャラップが先日公開した『State of the Global Workplace』の中で指摘された、従業員エンゲージメントの継続的な低下を読み解くための別の視点も提供する。エンゲージメントの低下は、「撤退」というより「分散」なのかもしれない。単一の仕事によって自分を定義しなくなった人々は、レイオフを、自己の崩壊ではなく、自身の能力を別のかたちで表現するきっかけだと考える。仕事は重要だが、それが自分自身を定義していたわけではない、ということである。

この変化は、自然発生的に起きたものではない。AIがそれを加速させた。このテクノロジーが、数年ではなく数カ月の単位で知識労働の大部分を吸収し、自動化し、再構築できるようになると、スキルの寿命は劇的に短くなる。「今日何をしているか」は、「次に何をするか」の予測材料になりにくくなった。そうした環境では、役割や肩書き、さらには職業そのものにアイデンティティを結びつけることはリスクとなる。人々は、単一の仕事ではなく、学習、関連性、移動できる能力にアイデンティティを結びつけることで適応しているのだ。

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翻訳=江津拓哉

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