経営・戦略

2026.02.08 16:31

医療DXが失敗する理由:技術ではなく組織文化が鍵を握る

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アシュラフ・アルタワシ氏は、テクノロジー起業家であり、CodeGuru.aeおよびDoctorna.comのCEOとして、医療分野のデジタルイノベーションを専門としている。


過去10年間で、医療業界は近代史において最も重要な業務変革の1つを経験してきた。多くの組織は紙の記録のデジタル化から始め、その後、予約システム、メッセージングツール、レポートダッシュボードを追加してきた。しかし、テクノロジーへの支出が増加しているにもかかわらず、共通のパターンが繰り返されている。ツールは導入されるが、その効果は停滞するのだ。その理由は、技術的な問題であることはほとんどない。多くのクリニックや病院グループにおいて、真のボトルネックは組織文化にある。

医療におけるデジタル変革は、ソフトウェアプロジェクトではない。それは、ワークフロー設計、説明責任、インセンティブ、患者とのコミュニケーション、リーダーシップの行動に関わるチェンジマネジメントプログラムである。これらの要素が欠けていると、最高のシステムでさえ、使われないデータベースや断片的なツールになってしまう。

最もよくある間違い:テクノロジーを解決策として扱うこと

医療業務は歴史的に縦割りで組織されており、受付、コールセンター、看護師、医師、マーケティング部門、財務部門がそれぞれ独自のプロセスを運用してきた。このため、チームの協働方法を再設計せずに新しいプラットフォームを導入すると、断片化を減らすどころか、むしろ増加させることが多い。

その結果は見慣れたものだ。患者は一貫性のないメッセージを受け取り、チームは見逃したフォローアップについて互いに責任を押し付け合い、レポートは信頼性を失い、リーダーシップはデータへの信頼を失う。その時点で、デジタルツールは「機能していない」とレッテルを貼られるが、真の問題は、組織が働き方を適応させなかったことにある。

実践的なフレームワーク:持続可能な変革の4つの層

クリニック業務全体で観察してきた経験から、測定可能な効果を生み出す最も確実な方法は、変革を4つの層として扱い、それぞれが次の層を可能にすることである。

1. ワークフロー

ツールを導入する前に、問い合わせから予約スケジューリング、確認、来院、そして来院後のフォローアップまで、患者の旅を端から端までマッピングする。引き継ぎが崩れる場所、意思決定が一貫していない場所、スタッフが定義されたステップではなく個人の記憶に頼っている場所を特定する。ワークフローが紙の上で明確でなければ、ソフトウェア上でも明確にはならない。

2. オーナーシップと説明責任

旅のすべてのステップには、明確な「オーナー」が必要である。初回応答時間に責任を持つのは誰か。無断キャンセル防止を担当するのは誰か。診察後のフォローアップを確実に行うのは誰か。多くのクリニックでは、これらは共有責任であり、それは通常、誰の責任でもないことを意味する。

3. コミュニケーション基準

患者の信頼は一貫性を通じて構築される。電話、メッセージング、メール、対面など、チャネル全体で「良いコミュニケーション」が何を意味するかを定義する。テンプレート、エスカレーションルール、サービスレベルの期待値(例えば、一定時間内の応答、フォローアップの定義された頻度)を作成する。テクノロジーはコミュニケーションを自動化できるが、それを標準化できるのは組織文化だけである。

4. 測定

リーダーシップがデータ駆動型の業務を望むなら、チームは数字を信頼する必要がある。それには一貫した定義が必要である。リードとして何がカウントされるか。予約として何がカウントされるか。コンバージョンとして何がカウントされるか。データ入力とレポーティングに対する規律あるアプローチとして何がカウントされるか。共有された定義がなければ、ダッシュボードは「事実」ではなく「意見」になる。

何を測定すべきか:実際に業務を改善する指標

多くの医療機関は、チームの改善に役立たない高レベルのボリューム指標に焦点を当てている。代わりに、実行可能な少数の業務KPIを追跡することを検討すべきである。

• 初回応答時間:患者が最初の問い合わせ後、意味のある返信を受け取るまでの速さはどれくらいか。

• フォローアップ完了率:問い合わせたが予約しなかった患者のうち、完全なフォローアップシーケンスを受けた割合は何パーセントか。

• チャネル・クリニック別の無断キャンセル率:確認ワークフローが失敗している場所を特定する。

• ソース別のコンバージョン率:これはマーケティング用語で「ROIを追う」ことではなく、業務負荷と人員配置のニーズを理解することである。

• 患者フィードバックループ:体験シグナルを捉え、内部でループを閉じるシンプルなメカニズムである。

ポイントは、より多くの指標を追加することではない。明確性を生み出し、行動変容を促進する少数の指標を選択することである。

人間的側面:リーダーが変革を定着させる方法

私が見てきた最も成功した変革には、3つの共通点があった。第一に、リーダーが見たい行動をモデル化した。リーダーがダッシュボードを使用せず、会議でデータを求めず、標準プロセスに従わなければ、チームもそうしない。第二に、トレーニングは一度きりのイベントではなく、継続的なものとして扱われた。クリニックには離職、シフトの変更、季節的なボリュームの急増があるため、トレーニングは軽量で、繰り返し可能で、業務に組み込まれている必要がある。最後に、最高の変革は、新しいワークフローをスタッフが感じられる成果に結びつけた。混乱した引き継ぎの減少、怒りの電話の減少、見逃したフォローアップの減少、よりスムーズなクリニックの日々である。

AIの位置づけ:なぜ組織文化が依然として最優先なのか

AIは医療業務にますます参入しており、患者のトリアージ、自動メッセージング、ボリューム予測、さらには文書化を支援している。しかし、AIは壊れたプロセスや乱雑なデータを補うことはできない。実際には、AIはすでに持っている基盤を拡大する。良くも悪くもである。AIから最も恩恵を受ける組織は、最初に採用する組織ではなく、最初に規律あるワークフロー、明確なオーナーシップ、一貫したコミュニケーション、信頼できるデータを構築する組織である。言い換えれば、リーダーは変革をリーダーシップの責任として扱うべきであり、組織文化がプロセスを定義し、テクノロジーはそれを実行するだけである。

forbes.com 原文

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