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2026.02.09 11:30

47兆円が蒸発、「SaaSの大崩壊」が始まった

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今回の売りのムードを端的に示したのが、チャマス・パリハピティヤがXに投稿した次の言葉だ。

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「『SaaS大崩壊』が始まりました。もう後戻りはありません……AI志向の新しいワークフローが来ます……『SaaS大崩壊』が始まりました」

3000億ドル(約47兆2000億円)規模の再評価は偶然ではない。投資家が、ワークフロー置換リスクの織り込みを加速させたことを反映している。

・機能競争は利益率を圧縮する
・ワークフローの置換は支出の向かう先を変える

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ワークフローが動けば、価値もそれに伴って動く。

この影響が表れるのに、顧客がレガシーなシステムを一夜にして引き剥がす必要はない。システムを統合する。契約を再交渉する。利用量を減らす。顧客企業の名前(ロゴ)が契約一覧から消える前に、キャッシュフローが先に弱まるのだ。市場はこの構図を本能的に理解している。だからこそ、短期のファンダメンタルズ(業績の基礎的条件)に関わらず、長らく「解約されにくい」と見なされてきた企業がそろって売られたのだ。

だが、投資家が信じ込んでいるストーリーは、全体像の半分でしかない。

起きているのはソフトウェアの崩壊ではない。より大きな市場の中で、価値がどこに帰属するかの再配分だ

ゴールドマン・サックスによる最近の調査は、AIエージェントが2020年代末までにソフトウェア市場全体を大幅に拡大させる一方、利益プール(業界全体の利益の総量)の中で不釣り合いに大きなシェアを獲得すると予測している。同調査の枠組みでは、AIエージェントは単にアプリケーションを強化するだけではない。仕事そのものへの接点になる。2030年までに、ソフトウェア経済の60%超が、レガシーSaaSのシート(ユーザーごとのライセンス)ではなく、エージェント型システムを通じて流れる可能性がある。

これが重要な違いだ。市場は縮小しているのではなく拡大している。しかし知能、記憶、実行が静的なアプリケーションの外へ移り、ツールを横断して動作する適応的なシステムへ移るにつれて、レガシーなソフトウェアの経済性は薄まっている。

言い換えれば、企業はソフトウェアへの支払いを減らしているのではない。ライセンスへの支払いを減らし、成果への支払いを増やしている。

この変化は、今回の売りとその裏にある投資機会の両方を説明する。業界の利益がどこに集まるかは、レガシー企業の売上が実際に消えるよりも速く動く。公開市場はその期待の変化に即座に反応する。プライベート市場が追いつくのは、いつもその後だ。

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翻訳=酒匂寛

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