米国時間2月3日、SaaS、データ関連、ソフトウェア比重の高い投資会社群全体で、約3000億ドル(約47兆2000億円)の時価総額が蒸発した。これは決算の未達でもマクロのショックでもない。AI製品のリリースが引き金だった。
ダメージは数カ月かけて積み上がっていた。市場が反応した時点で、IGVソフトウェア指数(IGV Software Index)はすでに9月下旬のピークから約30%下落していた。先週変わったのは下落の方向ではなく、下落の速さだった。
最も地盤の固いエンタープライズ(企業向け)ソフトウェア企業の数社が、わずか1日で急落した。セールスフォース、サービスナウ、アドビ、ワークデイはそれぞれ約7%下げた。インテュイットは約11%下落。同時に、セクター全体でバリュエーション・マルチプルが激しく圧縮された。ソフトウェア企業の平均予想PER(株価収益率)は、ここ数カ月で約39倍から約21倍へと崩れ落ちた。空売り勢は2026年に入ってからレガシーSaaS((旧来型)のSaaS)への逆張りですでに200億ドル(約3兆1400億円)超を稼ぎ、さらに賭けを積み増している。
市場がこれほどの価値を消し去るのは、根本の前提が壊れたときだけだ。
今回壊れた前提は、レガシーSaaSの成長が持続するという前提だ。
過去20年の大半で、企業向けソフトウェアは驚くほど安定した経済ストーリーの恩恵を受けてきた。ソフトウェアは構築コストが高い。乗り換えコストも高い。データはプロプライエタリ(独自仕様)のシステムに閉じ込められていた。
いったんプラットフォームが「SoR(System of Record:基幹の記録システム)」になると、そこに留まり続けることになる。こうした信念が、公募市場の評価倍率から、プライベートエクイティの買収、プライベートクレジットの審査(与信判断)まで、あらゆるものを支えてきた。継続収益(リカーリングレベニュー)は予見可能性の代理指標として扱われ、契約は解約されにくいと想定され、キャッシュフローは底堅いと考えられてきた。
AIはいま、その論理のあらゆる部分を同時に試している。
先週、投資家を動揺させたのは、AIがより良い機能を生み出せるという点ではない。ソフトウェア企業は長年、機能競争をくぐり抜けてきた。変わったのは、現代のAIシステムが、人間のワークフローの大部分をそのまま置き換え得ることだ。調査、分析、草案作成、照合、調整といった作業は、もはや単一アプリケーションの中に収まる必要がない。システムを横断して、自律的に実行できる。



