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2026.02.09 12:30

AIは思考を助けるのか、奪うのか──今「認知スキル」を鍛えるべき理由

Shutterstock.com

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長年にわたってテクノロジーは、暮らしを楽にすると約束してきた。実際そうなっている。答えは瞬時に得られ、意思決定はあらかじめ理解しやすいよう整理され、努力は必須ではなくなっている。だが人工知能(AI)がこの流れをさらに加速させる中で、控えめな問いが浮上してきている。それは、従来ほど頑張らなくてもよくなったとき、人間の脳には何が起きるのかというものだ。

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The Mind Company(ザ・マインド・カンパニー)の創業者ジェシー・ピカードは、10年以上にわたってこの問いを考え続けてきた。シリコンバレーが速度と効率の最適化を競う一方で、ピカードはもっと根本的なもの、つまり精神的な体力に注目している。ピカードの仕事は神経科学と行動変容、そしてテクノロジーが交差するところに位置している。そしてそれは、そうした便利さが放置されれば私たちが頼りにしている認知スキルを蝕んでしまい得るという信念に基づいている。

ピカードがザ・マインド・カンパニーを設立したのは、多くの人が対処していないズレに気づいてからだ。「人はかつてないほどデバイスに多くの時間を費やしているのに、その時間のほとんどが脳を鍛えることに役立っていないと気づいた」とピカードは語る。「身体のフィットネスには明確な手引きがあったが、メンタルのフィットネスにはそれがなかった」

その洞察は、広く利用されている一連のプロダクトへと発展した。「現在、当社は3つのアプリを展開している。脳トレと認知スキル向上のためのElevate、ストレス・睡眠・集中力を改善するパーソナライズされた瞑想アプリのBalance、そして毎日のパズルを通じて知識と好奇心を育てるSparkだ」とピカードは説明する。「ダウンロード数は8000万回を超え、人が落ち着きと明瞭さを維持し、そして博識でいられるよう支援するカテゴリを築いている」

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認知科学がベース

これまでに展開された数々の脳トレアプリとは異なり、ザ・マインド・カンパニーは確立された研究を土台にプロダクトを作ってきた。「当社のアプリはすべてその領域の専門家とともに開発され、スキルごとの研究や方法論に根ざしている」とピカードは語る。「たとえばElevateは間隔反復、デュアル・コーディング、チャンク化といった学習技術に基づいている。Balanceはボディスキャン、呼吸コントロール、視覚化といった検証済みの瞑想スキルを教える。Sparkはマイクロラーニング、アクティブリコール(能動的な想起)、インターリーブなどを取り入れている」

AIが人の思考法を変える(あるいは変えない)中で、この科学的基盤はますます重要になっている。

「現在、平均的な米国人は1日に約5時間スマホに費やしており、研究では成人の3分の1が慢性的なブレインフォグを訴え、さらに約3分の2が日常生活に支障をきたす認知的困難を経験していることが示されている」とピカードは懸念すべき傾向を指摘する。

この変化の中心にあるのが、ピカードが「認知のオフロード」と呼ぶものだ。「認知のオフロードが増えている。思考や記憶、問題解決をテクノロジーに任せることで、中核的なメンタルスキルを鍛える機会が長期的に減っていく」とピカードは言う。「テクノロジーが悪いわけではない。受動的な使い方が、脳をしなやかに保つために必要なメンタルの努力を置き換えてしまうことが問題だ」と話す。

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翻訳=溝口慈子

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