サイエンス

2026.02.10 12:00

カラスも人間のように「未来を想像する能力」を持っている

ワタリガラス(Shutterstock.com)

この研究によって、科学的な議論に拍車がかかった。その中で最も興味深いものの一つは、異なる構造をもった脳が、類似した認知的解決策にたどり着く過程を巡る議論だ。すなわち、人間とカラス科の鳥とでは神経の構造が違うのに、カラスはそうした実験で、人間のように計画できることを示している。

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カラスが、大脳新皮質に層構造がないのに先見性を持ち得るという事実は、実に興味深い。というのも、複雑な意思決定が、特定の種類の脳や進化過程に厳密に関連しているわけではないことを示唆しているからだ。どうやら、神経系が異なっていても、似たような生態学的あるいは社会的な課題を前にした場合には、計画する能力が生じ得るらしい。

その一方で、計画しているように見えても、実際には連合学習のメカニズムによって説明がつく、と主張する研究者もいる。つまり、動物はただ、行動と未来の結果を結びつけることを経験から学んでいるのであって、明確に「脳内でシミュレーション」を行なっているわけではない、という主張だ。

しかし、こうした論争においても、中心にいるのはワタリガラスだ。ワタリガラスは、複雑な行動の根底にあるメカニズムを解明する上で、極めて重要なテストケースとなっている。

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「将来の計画」についてワタリガラスが教えてくれること

カラス科の鳥が、実験室という環境で計画的な行動を見せるのであれば、それは人間の知能を解明する上で何を意味するのだろうか。
 
一つには、人間と人間以外の知能を分かつ本当の境界線はどこにあるのか、私たちは再考を迫られているということだ。時間的柔軟性(起こり得る未来のシナリオに基づいて行動する能力)は人間にとって、老後に備えて貯蓄することから、社会的な結果を予測することまで、日常生活に欠かせない要素だ。

鳥類の脳と哺乳類の大脳皮質では、そのメカニズム自体は異なるかもしれないが、行動的な結果は思いがけない形で一致している。今後の研究では、この分野を切り開いていくために次のような点が探求されていくだろう。

・野生のカラス科の鳥は、自然界で計画能力をどう発揮しているのか。
・こうした計画的な行動を支えているのは、どのような神経回路か。
・ほかの非霊長類も、同じような能力を持っているのか。

いずれにせよ、この研究分野から得られる最も重要な教訓はおそらく、「ワタリガラスは人間に似ている」ということではなく、「将来を想像する能力」は、知能そのものの重要な要素という可能性だ。

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forbes.com 原文

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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