その結果、ちょうど人間が、いつか手に入るかもしれない利益を見越して貯金するのと同様に、すぐ手に入る価値の低い報酬を食べるより、より価値の高い報酬を手に入れるためのトークンを持ち続けることを選択したワタリガラスがいることがわかった(すぐに食べられる質の悪い報酬と、お気に入りの報酬が入っている箱を開ける道具を同時に与えたところ、後者を選んだ)。
ワタリガラスは、報酬を得ることによる満足感を先送りし、すぐさま手に入る報酬ではなく、未来の利益を選ぶことをやってのけたのだ。その割合は、類人猿に匹敵するほどだった。
ワタリガラスは、目の前にあるエサよりもトークンを選ぶという、見事な柔軟性を示した。しかも、特定の条件下では、オランウータンやボノボ、チンパンジーをしのぐ能力を見せたのだ。
カラスは本当に未来を見通しているのか
私たちにとって、計画するという概念は、一見すると単純なことに思える。しかし、認知という観点に立つと、定義するのは驚くほど難しい。計画を話題にする時は大抵、目標を設定したり、楽しみを先送りにしたり、未来について抽象的な心的イメージを描き出したりという文脈で語られる。
こうしたさまざまな概念の基礎を築いたのは、霊長類に関する研究だ。そのため、「計画する」「先見性を持つ」ことは、霊長類と人類が進化の過程で独自に身に着けてきた特性だと考えられてきた。しかし、カラスやワタリガラス、カケスといったカラス科の鳥たちは、もうだいぶ前から、こうした考えに疑問を投げかけている。
例えば、2007年に『Nature』誌に掲載されたアメリカカケスに関する論文といった先行研究では、エサを蓄える「場所」だけでなく、「タイミング」を選ぶ能力を持つ鳥の存在が明らかになっている。これもまた、未来を予測している兆候だ。
先述したルンド大学の研究チームが実施した実験は、この流れを発展させ、ワタリガラスが、本能的な習性にはない「道具の使用」や「物の交換」といった領域でも先見性を発揮できることを明らかにした。要するに、どんな分野でも応用できる「領域一般的な計画能力(domain‑general planning)」があるということだ。


