運用コストはマスクの約束ほど低くならず、小規模な車両運用会社は様子見の可能性
資金力のある大手荷主への販売が、セミの一定の台数を支える助けにはなるはずだが、小規模な車両運用会社は、しばらくの間、導入に踏み切らない可能性がある。購入・リース価格に加えて、運用コストがマスクの約束したほど低くはならないためだ。マスクは2017年、テスラの商用車参入はトラック業界のゲームチェンジャーになると豪語し、1回の充電で500マイル(約800キロメートル)走る航続距離、急加速、ハイテクの監視ツールによる低メンテナンス、そして何より、当時は電気がディーゼル燃料より安かったため運用コストが安くなるという利点を強調した。
「トラック輸送、トラック輸送の経済性は、極めて重要です。1マイル(約1.6キロメートル)当たりコストが高すぎれば、経済的に成り立ちません」と、マスクは2017年の発表イベントで述べた。「私たちはこれについて本当によく考えました。リース費用、保険費用、整備、あらゆる要素、トラック輸送の真の総コストをすべて織り込むと、ディーゼルトラックは1マイル当たりでテスラ・セミより20%高くなります」。
電力需要の急増により、燃料コストの節約分が消滅
当時は計算が合ったかもしれないが、今はそうではない。テスラの見積もりは、ディーゼル燃料が1ガロン2.50ドル(約3.8リットル約393円)、電力が1kWh当たり7セント(約11円)という燃料費比較に基づいていた(ディーゼル1ガロンは電力40kWhに相当する)。9年後の現在、ディーゼル燃料の全米平均価格は約3.60ドル(約565円)だが、電力は全米で1kWh当たり18.9セント(約30円)へと急騰している。セントルイス連邦準備銀行(Federal Reserve Bank of St. Louis)によれば、カリフォルニアでは1kWh当たり33セント(約52円)に達することもある。この上昇は、マスク自身のxAIが運営するデータセンターなどの尽きることのない電力需要が大きな要因で、燃料面での潜在的な節約を消し去ってしまった。
「トランプ政権と補助金の喪失は別としても、原油価格の下落でディーゼル価格が下がっています」と、ACTリサーチの社長兼シニアアナリストであるケン・ヴィースは述べた。「大型車分野でEVが成功できる活路はありますが、昨年の今ごろと比べると確実に状況は厳しくなっています」。
競合他社の破綻や需要減速により、市場の追い風は向かい風に
電動大型トラック(バッテリー式と水素燃料電池式の双方)の活路の1つは、ロサンゼルス、ロングビーチ、オークランドといった大規模港から、近隣の倉庫や配送センターへ向かう短距離輸送である。ニコラ(Nikola)は、電動セミでこの市場を狙っていたが、昨年初めに資金が尽き、最終的に昨年5月に破産申請に至った。これは、トランプ政権下で連邦政策がクリーンエネルギー支援から離れた後、電動トラック需要が鈍化した時期と重なった。
「追い風は、基本的に向かい風になりました。インセンティブの欠如、政策の欠如、あるいは企業が数年前ほど自社イメージに積極的でなくなったことなどです」と、投資会社VectoIQのマネージングパートナーで、ニコラ最後のCEOだったスティーブ・ガースキーは述べた。「欧州系の企業の多くは、いまもグリーンなイメージを追求したいと思っていますが、米国では、多くの企業が、以前ほど積極的にそれを追い求めているとは思いません」。
ネバダ工場の生産能力に関する報告書の記載が、空欄となった
テスラは、米国における主要バッテリー工場である広大なネバダ・ギガファクトリーに新設した組立ラインで、セミを生産している。いつトラックがそのラインから実際に出てくるのかという正確な時期は決算報告では発表されなかったが、テスラが四半期ごとに公表する工場能力表には注目すべき更新があった。2025年第3四半期まで、テスラセミの生産ラインは年5万台を製造できると記載されていた。2026年の米国におけるクラス8の大型トラック販売は約24万5000台にとどまる見込みであり、そこから見ると、これは過大な能力に見える。
先週公表された第4四半期報告では、そのラインの生産能力の欄が、完全に空欄のまま残されていた。


