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2026.02.09 08:00

サム・アルトマンが明かす、「OpenAIでAGI実現」という史上最大の賭け

サム・アルトマン(Photo by Alex Wong/Getty Images)

ホワイトハウスで約79兆円の計画を発表し、ラリー・エリソンや孫正義と連携し拡大を続ける

この件は、OpenAIの拡大と歩調を合わせるように、アルトマンの影響力が急速に増していることも示している。トランプ大統領の2期目の政権が発足した初日、アルトマンはホワイトハウスで、大統領やオラクル共同創業者のラリー・エリソン、そしてソフトバンクの孫正義と並び、米国内のAIインフラに5000億ドル(約78.5兆円)を投じる「プロジェクト・スターゲート」を発表した。このプロジェクトは、誇大宣伝を好む大統領とリスクをいとわない投資家である孫にふさわしい派手な構想だったが、規模拡大を主張したのはアルトマンだったという。「話し合った結果、彼は『大きければ大きいほどいい』と言った」と孫はフォーブスに語る。「とにかく大きいほうがいいと言うんだよ」。

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アルトマンによれば、AIに関する取り組みにおいては、トランプ政権との仕事はやりやすいという。ただし、政権のナショナリズム的な政策は、彼自身やOpenAIの理念とは必ずしも一致していない。「大統領の仕事は、米国の利益を保証することだ。我々の使命は、人類全体のためのものだ。そこには、ある種の緊張関係がある」とアルトマンは語る。

とは言うものの、OpenAIが未来に向けて大規模な陣取り合戦を進める中で、両者の拡張志向が重なり合う部分もある。ChatGPTやSora、そしてジョニー・アイブが何を作っているのかが依然として明かされていないプロジェクトに加え、OpenAIは独自のAIチップの開発やXに対抗するSNSアプリの構想、人型の工場用ロボットの検討にまで踏み込んでいる。1月には、医療機関向けのソフトウェア群と、広告付きの無料プランを含むChatGPTの新たなビジネスモデルも発表した。

OpenAIの最高研究責任者マーク・チェンは、今後1年以内に、研究チームの発想を加速させる「AI研究者インターン」のような存在を開発したいとフォーブスに語っている。

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AGI実現を中核に据える一方、急拡大する社内には懸念や動揺も

「我々は、やがて自律的にイノベーションを生み出せるシステムに向かっている。その意味を、世界の大半はいまだ本当の意味では理解していないと思う」とアルトマンは言う。一方こうした動きを見て、アルトマンはOpenAIを「潰れないほど巨大な存在」にしようとしているだけだと批判する声もある。

ただし、側近はその見方を否定する。「何か秘密の計画があるとは思わない」と語るのは、OpenAIの会長を務めるブレット・テイラーだ。「人々は、AIが人類にもたらす影響に純粋に興奮しているだけだ」。

Yコンビネータのグレアムは、これはアルトマンの性分だと見る。「彼は、まだ活用されていない機会を見つけると、手を出さずにはいられない人物だ」と彼は語り、かつての教え子が「過小評価されているもの」に特に魅力を感じやすいと指摘した。

アップルが次世代SiriにグーグルのAIモデルを採用、開発競争における優位性に不安が広がる

アルトマンは、400社以上の企業に関与しており、その事実は集中力の欠如を示しているようにも見える。複数のOpenAI社員は、同社があまりにも多くのことを、あまりにも急ぎすぎているのではないかと懸念している。特に、期待外れとの見方が広がったGPT-5以降、「AIモデルの開発競争で優位性を保てるのか」という不安は根強い。

アップルが次世代SiriにグーグルのAIモデルを採用したことも、社内に動揺を与えた。この案件は、Apple Intelligenceですでに協業していたOpenAIが手がけて当然だと見られていたからだ。「正直、あれは痛かった」とあるエンジニアは語る。「多くの社員が、決まった話だと思っていた」。

アルトマン、「基本的にAGIはすでに構築」と勝利宣言

それでもアルトマンは、「私は、OpenAIと、その中核目標であるAGIに完全に集中している」と強調する。もっともAGIは定義そのものが曖昧だ。「実現までの時間軸も3年後かもしれず、30年後かもしれず、あるいは永遠に来ない可能性すらある」と語る彼は、そう語りつつも、あっさりと勝利を宣言してみせる。「我々は、基本的にAGIをすでに構築した。少なくとも、かなり近いところまでは来ている」。

サティア・ナデラは「まだ近づいていない」と否定、両社の緊張関係を滲ませる

しかし、アルトマンのこの発言に意見を求められたマイクロソフトのサティア・ナデラCEOは、「AGIには、まだまったく近づいていないと思うよ」と苦笑しながら語った。「我々には、きちんとしたプロセスがある。サムや私が『達成した』と宣言する話ではない」。

OpenAIにとって最重要パートナーの1社である立場からしても、ナデラは、両社がAI分野で競合する以上、自然な「摩擦」が生じることを認めている。「グレーゾーンは必ず出てくる」と彼は言う。「だから、“友であり敵でもある関係”という表現はしっくりくる」。

その数日後アルトマンは、ややトーンを落とし「あれは、文字どおりの意味ではなく、スピリチュアルな表現として言った」と釈明した。彼はまた、AGIの実現には、「中規模のブレークスルーが数多く必要になる」と認め、「大きなたった1つの飛躍が必要だとは思っていない」と語った。

アルトマン本人にとっての「自明」と、周囲の人間が見る「現実」との乖離

アルトマンは、自分の言動が周囲を困惑させることを理解している。長年の彼の師であるグレアムも、「彼の頭の中で何が起きているのかは、正直よくわからない」と語る。OpenAIのCEOとして、急激な事業拡大を目指すアルトマンの姿勢は、しばしば批判を招いてきた。

たとえば、今後8年間で、主にAIチップやデータセンターに1兆4000億ドル(約219.8兆円)を投じるという、ニュースの見出しを飾ったコミットメントがそうだ。アルトマン本人にとっては、AI利用が指数関数的に拡大する以上、その規模の資金と計算資源が必要になるのは「自明」だという。「でも、世界の大半は『財務的な現実』を見る。そして私は、その相反する視点を同時に頭に入れておくのが、あまり得意じゃないと思う」と彼は語る。

OpenAIの後継計画は、「会社の経営をAIモデルに任せる」

アルトマンが描くOpenAIの後継計画は、「会社の経営をAIモデルに任せる」というきわめてシンプルで、しかし常識外れなものだ。AIを「企業を運営できるほど高度な存在にすること」が目標なのであれば、なぜ自分の会社でそれを実現しないのかという発想だ。「私は、それを邪魔するつもりはまったくない。むしろ、誰よりも前向きであるべきだと思っている」とアルトマンは語った。</p

AGI後の世界で新たな情熱を見出す可能性

では、その次に何を目指すのか? 彼は、OpenAI以外に職業的な野心はないと語る。ただし1つだけ例外がある。AGI後の世界において、「まだ存在していない新しいタイプの仕事」に、情熱を見いだす可能性だ。

「本当に成し遂げたかったことは、ほとんど達成できたと思っている。今の自分は、いわば“ボーナスポイント”を取りにいっている段階なんだ」とアルトマンは語った。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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