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2026.02.09 10:00

ソフトバンクと概念実証の米セントラ、「組織の暗黙知」も学習する企業向け汎用知能開発で8億円調達

Shutterstock.com

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エンタープライズAIの多くは、アドオンや既存ソフトに追加する会話型AIアシスタント、文書管理システムに組み込まれたチャット機能、個別業務の効率化を担うエージェントといった形で提供されている。一方で、一部の小規模なAIスタートアップは異なるアプローチを取り、時間の経過とともに組織がどのように機能しているのかを、広範かつ継続的に理解するAIの実現を目指している。こうした新しいカテゴリーは「エンタープライズ向け汎用知能(enterprise general intelligence)」と呼ばれる。ただし、これは人工汎用知能(artificial general intelligence:AGI)を指すものではなく、特定の企業や事業について汎用的な理解力を備えたソフトウェアを意味する。

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サンフランシスコとトロントに拠点を置くスタートアップ「セントラ(Sentra.app)」は、a16z speedrunとTogether Fundが共同で主導したシードラウンドで500万ドル(約7億8000万円)を調達した。このラウンドには、Parable、Precursor Ventures、Inovia、Backwards Capital、Antigravity Capitalのほか、エンジェル投資家として、グーグルアドセンスの立ち上げを主導したゴクル・ラジャラムや、マイクロソフト、ドロップボックス、セールスフォース、スラックの元幹部が参加した。同社は、既にソフトバンクの米国事業部門において、有料での概念実証を実施している。

セントラは、自社製品を「組織の記憶システム」と位置づけている。検索や文章の要約に特化するのではなく、会議やメール、スラック、カレンダー、GitHub、プロジェクト管理ツールなどにまたがる意思決定やコミットメント、会話を継続的に記録し、それらを時間とともに更新される一つの文脈として捉え、全体を踏まえて推論するよう設計されている。

「現代の企業は、自社で管理・活用できる量を超える知識を日々生み出している」と、セントラのCEO(最高経営責任者)ジェ・グァン・パークは語る。「あらゆる会話、意思決定、文書には背景となる情報が含まれるが、それらは失われるか、部門ごとのサイロに閉じ込められてしまう。我々が構築しているのは、単に文書を管理するのではなく、意思決定がどのように行われたかを記録するシステムだ」と話す。実際、こうした文脈が失われると作業の重複や優先順位のズレを招き、財務的にも大きな無駄を生む。この問題は、AIエージェントが不完全な情報に基づいて行動することで深刻化する。

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大手プラットフォーム企業は、エージェント型エンタープライズシステムへの取り組みを加速させている。例えば、セールスフォースは「Agentforce」と「Agentforce 360」を導入し、セールスフォースとスラックのワークフロー全体に自律型エージェントを組み込んだ。グーグルクラウドは、「Gemini Enterprise」を安全なマルチエージェント型ビジネスアプリケーションの基盤として位置づけている。IBMの「WatsonX」は、ガバナンスやモデル管理、規制対応が必要な企業環境への導入に注力している。一方、セントラは異なるアプローチを採っており、ワークフロー自動化を目的とするのではなく、組織の記憶をシステムの土台として構築している。

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編集=朝香実

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