起業家

2026.02.09 10:00

ソフトバンクと概念実証の米セントラ、「組織の暗黙知」も学習する企業向け汎用知能開発で8億円調達

Shutterstock.com

セントラの共同創業者で元MIT教授のアシュウィン・ゴピナスは、アーカイブと記憶は本質的に異なると指摘する。「図書館は情報を保管するが、その内容を理解するわけではない。我々が構築しているのは、情報を読み解き、相互に結びつけながら、時間とともに判断を深めていく研究者に近い」と語る。このアプローチが、Glean、Adept、Contextual AIといった競合するミッドマーケット向けエンタープライズAIツールとの差別化につながっている。「セントラの価値は、単一のモデルへの依存によってではなく、組織内に蓄積された知識や背景情報によって形づくられ、時間の経過とともに高まっていく」とゴピナスは述べている。

advertisement

セントラのシステムは、古くなっている可能性のある文書に頼るのではなく、意思決定が行われる会議や会話などのリアルタイムの情報を取り込む。さらに、誰がどの決定を下し、どのような代替案が検討され、優先順位がどのように変化したのかを結び付けたタイムラインを構築する。その文脈をもとに議事録やリマインダー、進捗報告を生成し、コミットメントのズレや連携の乱れが生じた場合にはアラートを出す。

技術面では、セントラは商用の大規模言語モデルと独自の専門エージェントのネットワークを組み合わせ、会話の内容を分解してコミットメント事項を抽出するとともに、イベントを時間軸に沿って結びつける。モデルは顧客企業の組織データごとに分離された環境で学習され、エンタープライズ水準のセキュリティ管理が施されている。

パークはこのシステムを「継続性を支えるインフラ(continuity infrastructure)」と表現する。企業は、社員数が20〜30人を超える頃から、暗黙に共有されていた情報は維持しにくくなり、ある場で下された決定が他の場に十分に伝わらなくなる。その結果、いつの間にか打ち切られたはずのプロジェクトが継続されてしまうことがある。さらに、組織に蓄積された知識は、従業員の退職とともに失われていく。このシステムの開発は、ゴピナスがMIT時代に進めてきた「エージェント記憶(agentic memory)」の研究と、彼が様々な規模の企業で組織的文脈が崩れていく様子を直接観察してきた経験に基づいている。

advertisement

ソフトバンクによる有料の概念実証は、この課題が大企業で現実の問題として受け止められていることを示す、初期段階の裏付けとなっている。また、今回の資金調達は、投資家がこの分野に信頼を寄せていることの表れでもある。a16z Speedrunは、自律性や記憶を軸としたエンタープライズAIの開発を目指す複数のスタートアップを支援しており、Together FundはAIネイティブ組織向けのインフラ整備に注力している。

forbes.com 原文

編集=朝香実

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事