経済・社会

2026.02.06 17:15

新START失効は日本にとっての災厄か、それとも福音なのか

Sor Ser - stock.adobe.com

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米ロの間で唯一残った核軍縮の取り決め「新戦略兵器削減条約(新START)」が5日、失効した。長距離の配備戦略核をそれぞれ1550発までに制限した取り決めが消滅したことで、新たな核軍拡の時代に入ったという懸念が世界に広がっている。同時に、新STARTが締結された2010年当時から世界の状況は大きく変わった。新たな核大国、中国の台頭だ。3大核大国のうちの中国とロシア、さらには核を持つ北朝鮮に囲まれた日本にとり、新START失効はどのような意味を持つのか。

2010年当時、中国が保有する核兵器は200発前後とみられていた。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、2025年1月現在で、中国は600発の核兵器を保有しているとみられている。米国防総省は2030年までに中国が約1千発の核弾頭を保有すると予測している。2021年には中国西部、甘粛省玉門付近で大陸間弾道ミサイル(ICBM)の地下サイロ約120基が建設されている様子が衛星写真によって捉えられた。中国のICBM「DF41」には核弾頭10発を装着できると言われている。

外務省で軍縮不拡散専門官を長く務めた西田充・長崎大教授(国際安全保障・核軍縮)は米国が新STARTの1年延長というプーチン・ロシア大統領の提案を受け入れずに失効の道を選んだ背景について「1550発では、ロシアと中国を同時に両方抑止できないと判断したからだ」と語る。西田氏によれば、米国の核攻撃の基本政策は、都市を攻撃目標にするのではなく、敵が米国を核攻撃する能力を最大限減らすことに主眼が置かれている。1550発はロシアが保有するICBM発射基などの数を事前に確実に攻撃できる核兵器の数を積み上げた結果だという。

そのうえで、西田氏は新START失効に伴い、米国は最大限で約3500発、現実的にはまず約2千発程度まで戦略核を増やすと予測する。西田氏は「米国は多弾頭が可能なICBMのミニットマンや潜水艦発射型ミサイル(SLBM)のトライデントなどを敢えて単弾頭にしていた。多弾頭にすることで、コストと時間がかかる核運搬手段を新たに増やさずに、すぐに核抑止力を強化できる」と語る。そのうえで、余裕ができた分を中国の抑止に振り向けるとした。ロシアの場合は、軍事・経済的に米国のように大幅に増やすことは難しいという。

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文=牧野愛博

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