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2026.02.08 09:00

目端の利くビジネスリーダーが「AIについて語らなくなった」理由

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過去数年にわたるサンフランシスコの看板広告を、誰かが几帳面に写真で記録してきたのだとしたら、その写真からAI(人工知能)革命をほとんどコマ送りのように追えるはずだ。

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当初のメッセージは、純粋な期待と、比類ない知能を大規模に展開するというビジョンそのものだった。ほぼどの企業も、目に見えない閾値を越えて、動きの遅い競合を置き去りにする未来を解き放ったと発表しているように見えた。言葉は壮大で理想に満ち、対顧客と同じくらい対資本市場を意識していた。

そして、個々のシグナルが雑音の中に埋もれ始めると、音量はさらに上がり、主張はより鋭くなった。しばらくの間、あらゆる製品発表が、内部のAIが何をできるのか、どれだけ多くの段階を推論できるのか、どれほど自律的に動けるのかを、いっそう強く見せようとしているように感じられた。

能力アピール合戦は最高潮に達し、AIは部品や手段としてではなく、企業そのものを成り立たせる原理として提示された。

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セールスフォースがほぼちょうど1年前にAgentforce(エージェントフォース)を投入したとき、それはまさにその流れの中に位置づけられ、エージェント型システム(自律的に判断して動く仕組み)への野心に正面から応える、自信に満ちた、よく練られた一手として受け止められた。当時は新時代の幕開けと受け止められたが、今振り返れば、むしろ最高潮の瞬間だったようにも見える。

なぜなら、1年後の現在、論調は明らかに違って見えるからだ。

“さらなる認知的負担を積み重ねることにはならない”という確信

看板はまだあるが、言葉は柔らかくなり、成熟した。よく見ると、強調点は「システムが何をできるか」から、「組織がそれで“何”を達成するか」へ移っている。推論、計画、思考について語ることは減り、解決までの時間、処理量、摩擦の低減、そして届けた成果について語ることが増えている。

この変化と並行して、顧客側にはより静かな空気が漂い始めている。情報過多から生まれた「AI疲れ」が会話に入り込んできた。知能は十分に普及し、それだけでは注目を集められなくなった。経営幹部たちは、AIが自社の戦略に必要だと説得される必要はもうない。

彼らが求めているのは、AIがすでに複雑なシステムの上に“さらなる認知的負担を積み重ねることにはならない”という確信である。

この瞬間こそが、2026年を特徴づけることになる静かな逆転の始まりを告げている。

最も効果的なエンタープライズリーダーたちは、AIが視界から消えていく未来を見据えてすでに行動している。彼らは投資を続け、アーキテクチャを再構築し、インテリジェントシステムを軸にワークフローを再考している。しかし、意図的にAIをメッセージの前面から取り除いている。AIがどう機能するかを説明するのをやめ、代わりに何が変わるかに焦点を当てている。。

彼らは結果について語る。AIについては一言も触れずに。

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翻訳=酒匂寛

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