経済・社会

2026.02.06 16:15

『資本主義が嫌いな人のための経済学』著者に聞く、資本主義の欠陥と希望

資本主義は正義に適っているのか、企業はいかにふるまうべきなのか。「市場の失敗アプローチ」を提唱してビジネス倫理学に革新をもたらした哲学者、ジョセフ・ヒースが、資本主義と倫理の未来を語る。

advertisement

——近年、バーニー・サンダースやゾーラン・マムダニなど、社会主義の支持を公言する政治家が脚光を浴びている。日本ではマルクス研究者の斎藤幸平が人気を博している。なぜ世界中で社会主義運動が再び台頭しているのか。社会主義運動は、なぜソ連崩壊後ですら繰り返し現れ続けるのか。

この問題は、それぞれの国の文脈に大きく依存している。国ごとに事情が全く異なるから だ。アメリカだと、「社会主義」という言葉は、かなり穏当な福祉国家の拡張(例えば皆保険制度)を求める政治的要求を指す語として用いられることが多い。

アメリカでは、国家権力や国有化に対する忌避感が強いので、他の国では公共セクターが提供しているサービスの多くも、民間セクターが提供している。そのため、政府は補助金を出すことでそうしたサービスへのアクセスを拡大しようとする。こうした政府補助金は、様々なセクターで深刻なコスト上昇をもたらしてきた。最も明らかなのは医療と教育だ。住宅コストも劇的に高騰している(その理由はもっと込み入っているが)。そのため、中流階級から上流階級まで、多くの若者が生活費の問題に不安を抱えている。若者たちが「社会主義」を要求するときに求めているのは、こうした具体的な財への補助金の拡大なのだ(奨学金の免除や家賃規制、医療補助金など)。これは、世界中のほとんどの人が「社会主義」という語を用いているときに意味していることとは違う。加えて、アメリカ人のこうした試みはある意味で失敗が運命づけられている。補助金は、こうした領域で生じているコスト高騰の根本原因に手をつけておらず、拡大すればむしろ事態はいっそう悪化するからだ。

advertisement

アメリカ人が使っている意味とは違う、本当の意味での「社会主義」に関しても意見を述べておこう。資本主義に対する実現可能なオルタナティブを見つけ出す試みが失敗してきたにもかかわらず、社会主義運動が決して消え去らないのは、市場経済には真に反直観的な側面があるからだと私は考えている。

市場経済が根本的に協力的な生産のシステムであり、誰もが分業の発展から利益を得るということを考えれば、なぜ経済交換を組織化するにあたって敵対的なプロセス(競争)を利用するよう求めるのか、疑問に思うのはもっともだ。なぜみんなで団結して協力しないのだろう? 私の考えでは、これは完璧に理に適った疑問だ。だが実のところ、私たちが〔直接的に協力するのではなく〕競争を利用しているのにはもっともな理由がある。しかし、その理由は自明なものではないので、新世代が現れるたびに、繰り返し繰り返し説明する必要がある。こうした説明が疑わしく見られるのにも、完璧にもっともな理由がある(特に、市場経済のシステムが目下生み出している経済的不平等のことを考えれば)。

次ページ > 市場競争には道徳的妥協が伴う

高橋泰地(経済学101)=インタビュー・文

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事