経済・社会

2026.02.06 16:15

『資本主義が嫌いな人のための経済学』著者に聞く、資本主義の欠陥と希望

——最後に、インタビューの締めくくりとして大きな質問をしたい。資本主義に未来はあるか。資本主義は生き残り続けると思うか。

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今日の反資本主義左派の最も困惑させられる点の1つは、ソ連が崩壊し、中央経済計画が克服不能な困難を抱えていると認識してからというもの、現行のシステムに対するオルタナティブとなるような、一貫性のある実現可能な社会主義の構想を持てていないということだ。批評家のマーク・フィッシャーは『資本主義リアリズム』という著書の中で、「資本主義の終わりより世界の終わりを創造する方がたやすい」という有名な発言を行った。それでも、フィッシャーはその本の中で、資本主義に対する実現可能な代替案を全くもって提示していない。

もちろん、事実として言えば、資本主義の終わりを想像するのは簡単だ。難しいのは、人々が自ずから選択するであろう、現状よりも明らかに望ましいポスト資本主義社会を想像することだ。結果、昨今聞かれるような資本主義の批判は全く空虚なものとなっている。メッキを剥がしてみれば、資本主義の批判者たちが提案しているのは、上手くいかないものか、現行の制度をちょっとばかり修正しただけのものとなっている。ビジネス倫理〔市場というシステム内でのルールについて考える分野〕が、政治経済学〔どんな経済システムを採用すべきかを考える分野〕よりも建設的な哲学的企てだと私が考えるのはこのためだ。資本主義というシステムに留まるしかないなら、このシステム内の最も重要な経済主体に、よりよく行動するよう促すためにできることをすべきだ。

資本主義の未来に関して私がどう考えているかを言うと、資本主義システムは、経済的インタラクションの競争的側面をより儀礼的に、よりゲームのようにしていくことで、改善できると考えている。西洋の伝統的なイデオロギーでは、市場は個人の持つ自然な権利の行使から生まれてくるもので、経済へのいかなる政府介入もこうした権利への侵害となる。私が望むのは、市場経済がますます人為的な、仕組まれた競争となっているという事実が広く認識されることで、このような自然な権利の感覚が薄れていくことだ。敵対的システムの観点から言うと、私たちは市場を、戦争ではなくスポーツのように捉えようとすべきなのだ。

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JOSEPH HEATH◎1967年生まれ。トロント大学哲学部教授。哲学部および公共政策学部で教鞭をとる。95年ノースウェスタン大学大学院で博士号取得。著書に『資本主義が嫌いな人のための経済学』(NTT出版)、『啓蒙思想2.0』(早川書房)、新著に『資本主義にとって倫理とは何か』(慶應義塾大学出版会)。

高橋泰地(経済学101)=インタビュー・文

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